誰もが結婚式を挙げたいと思える世の中へ|ベストブライダルが取り組むHappinessプロジェクト

#ダイバーシティ#多様性 2024.03.22

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【更新日:2024年3月29日 by 中安淳平

人生の大きなイベントである結婚。そのイベントを支え、共に造っていくのがブライダル会社です。近年はダイバーシティや多様性の考え方が社会に浸透しつつあり、結婚式の形も変わりつつあると言います。

今回は株式会社ベストブライダルの青山セントグレース大聖堂 支配人の石井拓也さんに会社として取り組んでいるHappinessプロジェクトや近年の結婚式の在り方についてお話を伺いました。

「Happinessプロジェクト」がやりたくて入社する方も

ーー自己紹介をお願いいたします

石井:株式会社ベストブライダルで現在は青山セントグレース大聖堂の支配人をしております石井拓也と申します。2013年に入社し、ウエディングプロデューサーとして500組以上の挙式を手掛けてきました。現在は青山セントグレース大聖堂の支配人として施設の管理やウエディングプロデューサーの統括をしています。

ーー会社としてサステナビリティに力を入れられていこうとなったきっかけや経緯はどのようなところにあったのでしょうか

石井:お客様のために最善のサービスをしてあげたいという思いが強い会社ですので、以前から障がい者の方や外国籍の方に対してもスタッフが都度調べて対応していましたが、せっかくそのような取り組みをしているのに社外や顧客に伝わっていないのはもったいないと考えていました。

そんな中で、そういった取り組みをプロジェクトとして可視化し、外にも発信できるようにしていこうと、2020年に「Happinessプロジェクト」が立ち上がりました。

ーーHappinessプロジェクトの推進体制について教えてください

石井:私自身はプロジェクトの発足当時に立ち上げメンバーとしてお声がけいただいて、プロジェクトの進めていきたい内容について非常に賛同したので、参加させていただいていますが、現在は公募制のプロジェクトとなっています。弊社の場合はプロジェクトを進めていく際に指名性でメンバーが決まることが多いので、Happinessプロジェクトは社内ではレアなプロジェクトとだと言えます。

このプロジェクトは「自主性」や「若手にどんどん任せていく」というのがコンセプトでもあるので、手を挙げた人間だけが参加できる形にしています。最近ではHappinessプロジェクトがやりたくてうちの会社を志望したという子も出てきており、学生時代にやりたいと夢見てきたことが叶えられるようなものとなってきています。

推進体制はというと、最近はありがたいことにメンバーが増えてきたので、横浜や大宮、関西などエリアに分けて、各エリアごとに月一回ほどの頻度で打ち合わせをしています。それぞれのエリアごとに責任者を決め、各エリアで出たアイデアや企画を責任者たちが話し合ってやるかどうかを決めるといった流れで進めています。

ーーHappinessプロジェクトのような取り組みは競合他社もされているのでしょうか

石井:東京オリンピック・パラリンピックを契機にブライダル業界内でもダイバーシティ的な観点を意識していこうというような流れになっているのかなというのはあります。

LGBTQカップル向けの取り組みをされている企業は最近増えているなという印象ですが、我々は障がい者の方や国際結婚のような方々への取り組みも行っているので、その点では珍しいかもしれません。

きれいごとより実用性

ーーHappinessプロジェクトとして取り組んだものの中で、特に印象に残っているものありますか

石井:印象に残っているものと言いますと「ユニバーサルマナー検定」を全スタッフが受けられるように研修に取り入れたことと、独自の「ユニバーサルマナーブック」を制作したことです。「ユニバーサルマナー検定」とは多様な方々へ向き合うための「マインド」と「アクション」を体系的に学び、身につけるための検定です。また、弊社ではこの検定内容を踏まえて独自の「ユニバーサルマナーブック」も制作しました。

なぜ印象に残っているのかというと、表に立つプロデューサー達から「日々の対応の中ですごく効果を感じられる」という声が多く聞かれたからです。今まではプロデューサー個人に対応を任せていましたが、現在では該当される方がいらっしゃったときに「ハピネスプロジェクトに該当するお客様」として一貫した対応ができています。

ーーユニバーサルマナーブックを自社で作る上で意識したことや、ブック制作が役立った瞬間があれば教えてください

石井:ユニバーサルマナーブックを作るうえで一番意識したのは「お客様にちゃんと還元できる実用性があるのかどうか」ということです。

私自身プロデューサーをしていた経験もあるのでわかるのですが、プロデューサーは様々な仕事があるので、きれいごとが書いてあるだけでは読まないだろうなというのがありました。また、検定の勉強を通してマインドセットやどのようなアクションをとるべきかについてを学んでいますが、その知識を実際に使えるかどうかは別問題だと考えています。そのため、ブック制作にあたって如何に現場でプロデューサーが使いやすいものにできるかをこだわりました。なので、実際に我々が結婚式当日に使っている進行表やお客様とのお打ち合わせの段階で使っている進行表をベースに「私たちだったらどんなおもてなしができるのか」といったところを詰めていきました。具体的には国際結婚のお客様に向けて、お打ち合わせの際に提案できるように様々な国独自の結婚式文化などをまとめています。

このユニバーサルマナーブックを作って良かった点は「お客様にも真摯に取り組んでいることが伝わりやすい」ということです。「私たちもこんなこと知らなかったです」と言っていただけることもあり、お客様とのよりよいコミュニケーションにも役立っています。お客様にしてみても、口頭で説明されるだけではなく、あらかじめ製本されたものがあるというのは安心につながると思いますし、企業としての熱量がつたわるのではないでしょうか。

多様なカップルの事例を残していくことの意味

ーーSDGsやサステナビリティに関する業界としての課題はありますか

石井:「全ての人が結婚式をやろうと思えない雰囲気」があるというのは大きな課題だと感じます。

どういうことかというと、日本の結婚式というのはいい意味でも悪い意味でもイメージがある程度固まっていますよね。そのイメージに憧れて結婚式を挙げたいと思う人が多くいる一方で、障がい者の方やLGBTQの方、お子様がいる方などはそのイメージに当てはまれないので、自分達にはできないものだと感じられていたところがあるかと思います。

ーーその固まっているイメージを変えていくためにはどのようなことが必要だと思いますか

結婚式を挙げていただいた方に対して「体験者レポート」のようなものをとっていて、それを参考にされる方も多くいるのですが、そういうところに様々なカップルに出てもらうということが必要なように感じています。

今までは、障がい者の方やLGBTQの方が結婚式を挙げていても、それが体験者レポートなどの事例として残らなかったので、「同じような境遇の人が結婚式を挙げている」というのが中々伝わらない状況でした。私もこのプロジェクトに関わることで、当事者の方とお話をする機会が多いんですけど、私たちが思ってる以上に結婚式を挙げることに対するハードルが高いんだなというのを実感しています。

だからこそ、Happinessプロジェクトに該当される方々が挙げられた素晴らしい式の形を、別の方のためにも残していかなければと思います。

ーーHappinessプロジェクトに該当される方々が挙げられた式で印象に残っているものがあれば教えてください

石井:聴覚障害の新郎さんの式が印象に残っています。その方の担当だったプロデューサーは、担当が決まったときから約半年間手話の勉強をし、当日の新郎さんへの説明を全て手話でやっていたんです。料理やドリンクを給仕しているスタッフにも、ある程度簡単な手話を落とし込んで、「おめでとうございます」などのメッセージを全て手話でお伝えしていました。新郎新婦の方も喜んでいただけましたが、新郎の親御さんも大変喜んでいただいたというのが印象に残っています。

この式は会社で半期に一回行われている「ベストブライダルアワード」という一番良いプロデュースができた式を表彰するアワードでグランプリを受賞もしました。Happinessプロジェクトで学んだ内容をもとにグランプリを受賞するような結婚式をつくりあげてくれたことが私としてはとても嬉しく、誇らしい気持ちになりました。

ーーこれからの戦略・展望について教えてください

石井:最近の調査では、「結婚式に何を求めてますか」という問いに対して「感動や感謝を伝えたい」というのがいわゆるz世代ぐらいまではあったんですけど、その次の世代になると「2人らしさを表現したい」というのが増え始めているんです。多様性を認めていくという社会的な風潮がここにも現れていると思うのですが、我々がHappinessプロジェクトを通じて学んだように、お客様に寄り添って、多様な選択肢を提示しながら最善を一緒に探していくことで、このニーズに答えていきたいです。

障害とか、国際結婚とか、LGBTQの方々とかに囚われずに、「『全て』の人たちを感動させて満足させる結婚式を創り上げる施設でありたい」というのがベストブライダルとして目指すべき姿であるので、 そこを忘れることなくもっとHappinessプロジェクトの取り組みや考え方を社内外に広めていきたいです。

さいごに

今回の取材で一番印象に残っているのは「聴覚障害の新郎さんの結婚式の話」です。その新郎さんのために半年間も手話の勉強をしたプロデューサーさんがいるということがベストブライダルにHappinessプロジェクトが浸透している証ではないかと感じました。

今後も様々なカップルの結婚式の様子が事例として残り、もっと多くの方が結婚式を挙げたいと思えるような世の中になればいいなと思えるインタビューでした。

 

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