ダイバーシティ推進における男性育休の成功事例に迫る|読売広告社

#男性育休 2023.10.20

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【更新日:2023年10月20日 by 中安淳平

読売広告社は、ビジネスと社会のサステナブルな成長のために、ともに変化へ挑戦するパートナー「GAME CHANGE PARTNER」となることを目指し、サステナビリティ活動にも力を入れられています。 

その取り組みは、世界的なビジネス・サステナビリティ評価機関である EcoVadis社による2023年の調査においても評価され、審査対象の世界全業種、全企業中、総合スコアが上位25%以上の企業に贈られる「シルバー」メダルを獲得しました。 特に、ダイバーシティ関連の研修やキャリア支援などの制度拡充を積極的に進め、男性育休の100%取得を宣言からわずか1年で達成。 

育児休業の取得を起点に業務の棚卸しや引継ぎ、分担などを促すことにより属人化の抑制と解消を図るなど、働きやすい職場環境作りに向けた自発的な取り組みも生まれているといいます。 

これらの背景に何があるのか、男性育休の推進に携わる中澤さんと楠本さんに経緯や具体的な施策も合わせてインタビューしました。

男性育休の取得推進に取り組むメリットを社長自ら発信

ーーまず初めに、自己紹介をお願いします。

中澤:キャリアデザイン局の中澤と申します。私は中途入社ですが、キャリアデザイン局はこの4月に新設され、社員の能力開発とキャリア開発を支援するというミッションを持ちつつ、人材開発や組織開発、ダイバーシティ領域などを大きな課題として捉えています。これらの課題は、会社としても注力している部分です。プライベートでは、2人子どもがいて、子育てと仕事の両立を日々行っています。

楠本:人事局労務部の楠本です。新卒で入社し、営業を経て4年ほど前から労務領域で働いています。主に働き方や福利厚生を担当していて、 働き方に資するプランニングや制度設計を行っています。 その中で、「育児・介護休業法」の改正に伴い、キャリアデザイン局の中澤さんと共に、同性の立場で男性育休に関わっています。既婚者ではありますが、子どもはおりませんので、未来に向けた学習という意味も含めて日々取り組んでいます。

ーー「男性育休の100%を目指す」と宣言を出したきっかけはなんでしたか。

中澤:2022年度より経営体制の変更があり、ビジネスと社会のサステナブルな成長のために、ともに変化へ挑戦するパートナー「GAME CHANGE PARTNER」となることが会社として掲げられました。そこで経営基盤の強化としてのダイバーシティ推進の改革案を経営陣に上申させていただきました。その中のひとつに、男性育休の100%取得を目指すことと、達成するための具体的な施策も提言しました。この上申に対して、経営陣から「やってみよう」と言っていただけたので、まずは社内向けに説明会を行いました。

また、週に1回、社長から全社員にメールが発信されているのですが、その中でも社長の言葉で「男性が育休を取ることで、様々なメリットが生まれる」ことを解説していただきました。具体的なメリットとしては、生活者視点や社会課題への視点が得られるだけでなく、自身の業務の棚卸やシェアリング。また、育休中の方の仕事を後輩が引き受けることで、他の社員の経験値アップにつながること。さらには男性育休を取得する人が増えていくことで、育児に対する理解もより深まっていくことを会社全体で推進していこうとする姿勢を社長から発信いただけたことは大きかったです。

ーー育児休暇に関して、経営陣の方々の理解を得るためにしていたことはありますか。

楠本:男性育休に向けた取り組みを始める前から、中澤さんは役員の方に対してワークライフバランスを実現する取り組みについて会話を重ねていました。その流れもあって、ダイバーシティに取り組むべきという認識はすでに経営陣の中にも広まっていたように思います。

中澤:経営陣の方々には、育休推進が採用にも響いてくることをお伝えしました。特に今の学生は働き方のひとつとして、育休を取りたいとする意向も高くなっています。そのため当社の採用ページでも育休制度を明記したい旨をお話しました。

社員の声から生まれた、取得者の所属部署へのインセンティブ支給制度

ーー具体的に行われた施策は、どのようなものがありますか。

中澤:2022年度男性育休100%達成に向けた取り組みとして、育児休業取得者への復職一時金の支給と取得者が所属するチームメンバーに対してのインセンティブ支給制度の制定を行いました。

特に、インセンティブ支給制度が効果的だったように感じています。これは一定期間以上の育休取得者がいる部署にインセンティブが支給される仕組みで、社員から上がった意見を反映させた制度です。

1日でも取得すれば育休取得の実績にはなりますが、先にお話しした業務の棚卸しや後輩社員の経験値向上、属人化の解消という狙いもあり、会社としては2週間の取得を推奨しています。インセンティブを実際に支給された部署では、懇親会を兼ねて美味しいものを食べに行くなど、部内コミュニケーションの活性化につながっています。

その他、お子さんのいる子育て先輩社員がぱぱメンター・ままメンターとなり、育児のコツや仕事との両立などの悩み相談にのる制度もあります。こちらは、2022年度以前から実施していますが、先ほどの2つの施策との相乗効果で取得推進に繋がったと思います。

今後も従業員が働きやすい環境づくりのため、制度の改善を推進してまいります。

ーー育休の制度を運営していく上で一番壁に当たった出来事はありますか。

楠本:正直、苦悩はそこまでありませんでした。強いて言えば、設計段階での費用面でしょうか。つまり、社員保証や部署に対してのインセンティブについてなどです。

他社の事例を参考に年間予算の設定を考えていきました。納得感のある金額ってどのぐらいなのかその塩梅を探るのが難しかったです。

ただし、現在の運用内容は一時的なものであることを社員には伝えています。というのも、あくまでの今回の施策は、男性育休の取得は当り前のことという認識を浸透させていくための過程と考えているからです。お金をもらえるから取得するという定着の仕方では意味がないと考えています。

育児を経験することで、業務の効率化など働き方を見直す機会になった

ーー2022年度の男性育休取得対象者の9名全員が育休を取得されたということですが、実際に取得されたご本人からは、どのような声が上がりましたか。

楠本:取得者の中には「子どもの面倒を見ることに対しての認識が甘かったことに気づけた」、という声をいただいた方がいました。1人で子どもを世話する際にはぜったい目が離せないことに加え、これまでやってこなかった家事をすることで、子育てをしながらの家事がいかに大変かを改めて実感したと話してくれた方もいました。

また、ある社員は、第一子が生まれた際、育休ではなく数日間のみ有給を取得する形をとったが、育児も仕事も中途半端になって良くないと感じたことから第二子の際は2週間の育休を取得。しっかり休んで、育児に専念できた方がよかったと教えてくれました。

中澤:業務に向き合う心の変化を挙げた方も多かったです。子育てを経験することで業務の効率化を意識するようになり、仕事の取り組み方を改めて見直す機会になったという声もありました。

これは、当初社長が発信した取得メリットに繋がる声かと思います。

ーー取得者がいる部署の社員からは、どのような声が上がりましたか。

楠本:部署の方々に伺っても、育休取得と柔軟な働き方に対してみなさん理解いただいていると感じています。それは、取得者が育休取得申請をされるタイミングが、みなさん半年から2,3か月前と早めにお知らせいただけたことも影響しているかと思います。

部門長や部署長へ相談しつつ、引き継ぎなど休暇に向けての準備も時間をかけてしっかり実施いただいているので、同僚の方の負担も軽減できるように各所にご協力いただいています。

ーー育休の他に推進している、SDGsに関連した具体的な施策はありますか。

中澤:ダイバーシティの領域は今後も注力して実施していきます。

育児を行う社員への両立支援だけでなく、将来的にライフステージの変化を迎えるかもしれない社員に対しての情報提供や、コミュニティ形成などの施策を実施していきたいと思っています。

楠本:入社前は福利厚生のことを気にされて質問される方が多いように思いますが、いざ社員となると会社の制度への興味が薄れてしまうのか、育休制度のことを詳しく知らない方も実は多いんです。

中澤:これは性別に関係なく言えることですが、子どもを持つ・持たないといったことにかかわらず、自身のライフキャリアを考えていく上で、会社の制度を知ってもらい悩み相談ができるような環境をつくっていきたいと思っています。

そして、ダイバーシティの課題は、当社だけでなく日本全体の企業課題だと思います。今後もよりダイバーシティを推し進めていく観点で、社員全体に向けていろいろな施策を考えていきます。

さいごに

読売広告社の男性育休100%取得の達成は、経営陣の理解や育休取得推進施策の導入など、総合的な取り組みによる成果でした。これは現代の多様性とワークライフバランスを重視する時代に理想的な取り組みであり、男性育休への取り組みは他の企業にも波及していくと感じました。

 

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