会社の成長が社会問題の縮小に|ユーグレナのサステナブルな経営

#バイオ燃料 2023.09.04

この記事をSNSでシェア!

 

【更新日:2023年11月10日 by 中安淳平

株式会社ユーグレナ(以下、ユーグレナ社)は、藻の一種であるユーグレナ(和名:ミドリムシ)を主に活用し、食品や化粧品の販売、バイオ燃料の研究等を行っているバイオテクノロジー企業です。

ユーグレナは59種類もの豊富な栄養素を含んでおり、栄養問題などの社会的課題の解決に役立つと考えられています。

ユーグレナ社は2020年より企業理念を刷新し、持続可能な社会を目指し、「ユーグレナ社がありたい姿」として、ユーグレナ・フィロソフィーをSustainability First(以下、サステナビリティ・ファースト)と掲げました。

今回は、ユーグレナ社で広報・PRを担当している北見さんにユーグレナ社のサステナビリティ・ファーストを掲げた思いやサステナビリティに対するPRの重要性、サステナブルな事業の1つであるバイオ燃料事業についての取り組みなどについてお話を伺いました。

 

過去のユーグレナ社の記事はこちら↓

人と地球を健康にしたい目標からサステナブルな社会実現へ

ーー自己紹介をお願いします。

広報宣伝部で広報・PRを担当している北見と申します。前職では、下着メーカーや化粧品メーカー、IT企業の情報システム、Web担当、宣伝、EC、広報の業務を広く行っていました。自分自身の中で、作る側の情熱からプロダクトアウトが魅力的と感じており、今市場にないものを市場に浸透させるだけではなく、今後その市場をどう熱狂させていくのかをプロモーションしていきたいと思い2019年にユーグレナに入社しました。

ーーユーグレナ社の「サステナビリティ・ファースト」について教えてください。

創業15年を迎えた2020年が、当社のバイオ燃料を世に出していく初年度のタイミングであったため、社会との関わりを変えていくために新しいビジョンや考え方を世の中に発信することが必要であると考えてできたものが「サステナビリティ・ファースト」です。

サステナビリティ・ファーストは、「自分の幸せが、誰かの幸せと共存し続けること」と定義し、人と地球を健康にする目標を掲げることにより、サステナブルな社会を実現するための事業を作り出しやすい環境にしています。私たちが取り組む事業の拡大が社会問題の縮小に繋がります。また、サステナブルな事業展開をしている当社の事業が成長することにより、より多くの社会解決に繋がる道を作ることができ、サステナビリティのファーストペンギンになることができるのです。

ーーサステナビリティをマーケットとして作られたユーグレナ社ならではの工夫について教えてください。

ユーグレナはその豊富な栄養素から、ユーグレナを使用した食品事業を立ち上げ、サステナブルな健康食品として販売を開始しました。販売開始した中で、ユーグレナはサステナブルな食品として確立はされましたが、市場獲得ができていない状況でした。その中で、自分たちの事業の確立化や市場獲得する以上に、社会課題を解決していくことが重要であると考え、その1つとしてバイオ燃料に関する研究を開始しました。やはり、食品事業の市場獲得においても、サステナビリティを優先していくと判断したのは、当社ならではのサステナビリティをマーケットとして作って行く上での工夫であったと思っています。

ーーサステナビリティに対するPRの重要性について教えてください。

SDGsにおけるPRの関係性を考えると、SDGsとしての貢献が完璧にならないと発表をしない所が多いです。例えば、こんなSDGsの発表をしたら、問い合わせが多くきてしまうから、問い合わせが来ないような発表を目指そうとしています。しかし、それだと誰が何をしているのか分からない状態になってしまい、発表までその企業がどんなSDGsに向けた取り組みをしているのか分からず、それが正しい取り組みであるのか判断することが遅れてしまうのです。そのため、SDGsに関する取り組みのPRは途上であっても発表し、周りの意見を取り入れながらサステナビリティに少しでも近づけるようにすることが必要であり、PRの重要性がとても強いと考えています。

ユーグレナでサステナブルな燃料の開発へ

ーーバイオ燃料事業はどのような経緯で取り組み始めたのですか。

地中にある石油などの化石燃料を燃やした時には二酸化炭素が排出され、大気中に二酸化炭素が増え地球温暖化などの社会課題が深刻化されてしまいます。一方、バイオ燃料は、植物や動物など、地上にある生物資源から製造されます。生物資源は、成長過程で光合成を行い、大気中の二酸化炭素を吸収する為、大気中の二酸化炭素の増加を抑えることができます。当社は地上にいる生物である「ユーグレナ」からバイオ燃料を製造することができるのではないかと考え、研究を開始し、バイオ燃料事業の取り組みを始めました。現在では、神奈川県横浜市鶴見区に実証プラントを作り、バイオ燃料「サステオ」を製造・販売しています。

ーーバイオ燃料「サステオ」の取り組みについて教えてください。

バイオ燃料「サステオ」の取り組みに関しては2つ紹介させてください。

1つ目の取り組みは、製造しているバイオジェット燃料とバイオディーゼル燃料の2つの燃料の試験運用です。具体的には、2020年3月からいすゞ自動車の工場と最寄り駅間の社員用のバスや、横浜市鶴見区で走行している川崎鶴見臨港バスなどを代表としてバイオ燃料「サステオ」を使用する取り組みをしています。また、2021年6月には国交省のフライトチェッカーやHondaのプライベートジェット機の2機に対して、バイオ燃料「サステオ」を使用したフライトが実現しました。

2つ目の取り組みは、佐川急便と協力しユーグレナ社製品の公式通販における配送の一部にサステオを使用するサステナブル配送プロジェクトに取り組んでいます。このプロジェクトでは、お客様にもバイオ燃料導入に伴うコストの一部をご支援いただきます。お客様からいただいた参加費と同額を、ユーグレナ社、佐川急便の2社からも拠出し、その合計金額をサステオ導入費用とします。

サステナブルな配送プロジェクト

詳しくはコチラ▼https://online.euglena.jp/shop/pages/sustainablehaisou.aspx

バイオ燃料が進まない意外な課題点とは

ーー日本全体のバイオ燃料の課題感について教えてください。

バイオ燃料は工場を作り燃料を製造していくため、製造環境を整えようとするだけでも3〜5年の時間がかかってしまうので、バイオ燃料をすぐに製造したいと考えても最低3年はかかってしまいます。また、世界では、バイオ燃料を使用したフライトが50万回以上も行われていますが、日本は非常に遅れています。その他にも、自分の所有する車にバイオ燃料を入れる抵抗感をなくすことが一つの課題であると考えています。当社のバイオ燃料が安全であることは分かっているのですが、やはり自分の車に今までにない燃料を入れるのはとてもハードルが高いことです。そのため、皆さんにバイオ燃料を知ってもらった上で、どのようにバイオ燃料を抵抗感なく入れてもらえるのかということも考えています。

ーーユーグレナ社がバイオ燃料製造するにあたって何か課題点はありますか? 

バイオ燃料の原材である使用済み食用油は国内外で需要が高まり、供給が逼迫する見通し。原料を安定的に費用を抑えながら確保していくかという課題があります。、まだまだバイオ燃料の供給量が少なく、供給量を増やして行く必要があるなど、解決していかなくてはいけない課題点があげられます。

ーー今後のサステナビリティに関する展望を教えてください。

サステナビリティに向けた今後の展望としては、今後、2026年以降のタイミングで当社がサステナビリティとして取り組んでいるバイオ燃料と食品、化粧品事業を両輪にしていき、よりサステナブルな社会実現に向けて取り組んでいきたいと考えています。また、事業の両輪だけでは、サステナビリティに関する問題をすべて解決できるわけではないため、ユーグレナの原料からバイオ燃料を作るときにでる油の残渣を「サステナブルな農業に活用することはできないか?」などの研究を進めていきたいです。また、何かをしたら何かができなくなるというものがない事業形態を目指しつつ、誰かが得をしたら誰かが損をすることがないような社会をつくれるように、できる限りの努力をしていきたいと考えています。

 さいごに

今回の取材では、ユーグレナ社がサステナビリティを優先的に考え、サステナブルな社会実現に向けた事業を展開していくのか、そしてどのようにPRしていくことで、よりサステナビリティに近づくことができるのか北見さんも意見から深く学ぶことができました。

サステナビリティな社会実現に向けたユーグレナ社の想いや取り組みは、持続可能な社会に大きく繋がるきっかけとなるかもしれません。

 

この記事をSNSでシェア!

  • ランキング

    新着記事

    アシックスの新しいランニングシューズNIMBUS MIRAI(ニンバスミライ)

    SDGsの基礎知識

    食品ロスとは?原因や日本と世界の現状、家庭でできる対策を紹介

    もっとみる

    おすすめ

    ITがこれからのトマトを救う|NEC×カゴメのスマート農業CropScope

    「サステナビリティ」な活動を、もっと身近に。ネスレ日本が見据える循環型社会とは

    押し付けないことが大切|JALが本気で取り組むESG推進

    サークルプランニングでみんなに利益を|SIGNINGならではの考え方