サステナブルな「広場」をつくる|プラザクリエイトのSDGsな取り組み

2023.06.26

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【更新日:2023年6月26日 by 中安淳平

30年以上前に、写真プリント事業からスタートしたプラザクリエイトは、「みんなの広場をつくる。」を企業理念に掲げ、時代に合わせて事業を更新し続けています。2022年には、神宮前にサステナブルな衣類プリンタ―を設置したアパレル拠点をオープンしました。

今回は、代表取締役社長の新谷隼人氏に、プラザクリエイトが行うSDGsへの取り組みや今後のビジョンについて伺いました。

創業30年から経っても変わらない、創業者のベンチャー気質に惹かれた

ーーまずはじめに、新谷さんの自己紹介をお願いします。

プラザクリエイト代表取締役社長の新谷隼人です。2019年にプラザクリエイトに入社しました。一番長いキャリアとしては、リクルートに10年ほど勤めていて、ECやSaaSなどの新規事業開発、拡大をしていました。その経験を活かし、プラザクリエイトではDIYクラフトキットブランド「つくるんです®」のブランド開発や、Zoomと共同企画した個室ブース「One-Bo」のローンチなど、新規事業を継続して担ってきました。

ーープラザクリエイトへの入社のきっかけを教えてください。

当時のプラザクリエイト社長である創業者の大島と出会って、気があったというのが入社を決めた理由です。リクルート時代からプラザクリエイトという会社については認識していましたし、当時お世話になった上司が役員をされていたこともあり、少しづつ交流していました。研修をしてほしいと依頼されたり、事業の相談を受けたりしているうちに、だんだんと距離が近づきました。関係を継続している中で「そんなにプラザクリエイトのことを考えてくれているなら、入社して、新谷さんがリーダーとして会社を引っ張ってください!」とお誘いを受けました。

ーープラザクリエイトへの入社を決めた一番の理由は何ですか?

リクルートでは出来なかった経験が全て出来る会社だった、ということが大きかったです。長い間リクルートに勤めてきたので、延長戦上のキャリアを考えると、大手ITやスタートアップに行くというのが王道なのですが、それだと想像できるし、おもしろみにかけるかもしれないと思うようになりました。リアルに店舗を持っていて、有形のものづくりをやっている会社で、今までとは全く異なる環境に身を置いた時に自分が何ができるのかを知りたくて、新たな環境に飛び込んでみようと決心しました。

ーー創業者の大島さんのどんな姿に共感されたのですか。

創業から30年以上経っても、ベンチャーマインドを持っているところです。大島は、どっしり構えているタイプではなく、色々自分から情報を集めたり、人に会ったりして、少しでも面白い種がないかとずっと動き続け、常に最新の情報に触れている人です。

リクルート時代に出会ってきた経営者は、物事はこうあるべき、世の中はこう変わっていくだろうなど、大きいスケールの話をされることが多かったんです。一方、大島は、「ここの会社のこんな人に会って、今こういうサービスが流行っているらしい」など、具体的な話をしてくれました。一次情報を自ら取りに行く、現場主義の経営スタイルが魅力的だったこと、創業者という圧倒的な存在の近くで働けるという貴重な経験をできる会社は他にはないと感じたことから、入社を決めました。

人と人とがつながりを感じられる、広場を創りたい

ーープラザクリエイトの社名の意味を教えてください。

プラザ(広場)をクリエイト(創造)するという意味が込められています。創業者の大島は写真のパワーを信じています。シャッターを押せば、自分のいいなと思ったものや景色、瞬間を切り取れる写真は、好きなものや感動した景色を誰かとシェアすることができます。シェアすることで、共感が生まれ、人とのコミュニケーションが広がっていくーー。そんな原体験を持つ大島が、様々な景色を観ていく中で、街中のプラザ(広場)を目にし、まさに自分たちが目指している世界観を体現していると感じたことから、プラザクリエイトという社名をつけました。

ーー事業内容について教えてください。

主な事業内容は、写真プリントなどを行う「イメージング事業」とソフトバンクやワイモバイルの店舗を運営する「モバイル事業」、新規事業の立案を行う「ソウゾウ事業」の3つです。ソウゾウ事業では具体的に、DIYクラフトキット「つくるんです®」の開発・販売や次世代のアパレルをつくるファッション拠点・カフェ、グランピング事業を行っています。強みとして、埼玉県和光市に自社工場をもっています。

SDGsネイティブのメンバーが中心となって始まった取り組み

ーーSDGsに力を入れようと思われたキッカケはなんでしたか?

最初のスタートは、2021年頃、CSR活動を始めたことからでした。地域に根付いた店舗を展開している会社として、事業とは別の軸で地域の課題に向き合おうと考えました。そこで、コロナ禍で遊びが限定的になっている学童へ新たな遊びを提供すべくTシャツをつくるワークショップをしたり、超高齢化社会における高齢者の心の促進を目指し、昔の写真を見ながらお話をするお茶会を開いたりしました。

活動の中心となるのは、SDGsネイティブと呼ばれる世代の入社4年目の若手メンバーだったこともあり、活動が発展するにつれ、SDGsへの意識が高まりました。

現在のサステナビリティにおける取り組みでは、3つの軸を掲げています。地域に根付いた店舗を展開する会社としての「地域社会への貢献」、開かれた広場をつくるための「多様な仲間と広場をつくる」、ものづくりを担う身として「つくる責任つかう責任」です。今後は、より具体的に、数字に落とした目標を作りたいと考えています。

取り組みで大事にしているのは、他社と協業することです。SDGsは本来、地球に住むみんなで取り組んでいくべき課題だと感じています。1社ではできることや影響範囲が限られてしまうので、他社と手を取り合うようにしています。

協業という形でのサステナブルな取り組みについて

ーーどのような会社と協業しているのでしょうか?

例えば、Kornit Digitalというイスラエルのメーカーと協業しています。パートナーであるKornit Digitalはサステナビリティレポートなども開示し、企業としてSDGsに向き合い続けてきたグローバル企業で「今後はSDGsを考えずして、ものづくりの活動はできないよ」と説いてくれました。その姿勢から学ばせていただくことも期待しながら、2022年11月、Kornit Digitalのプリンターを設置したアパレルの新拠点、「HATTO CREATIVE PLAZA」を原宿・神宮前エリアにオープンしました。

30年以上、写真屋を展開してきたプラザクリエイトでは、お客様のカメラやスマートフォンにある一枚ごとに異なる写真を、受注を受けてから印刷をする「オンデマンドプリント」を長年やってきました。この、受注に応じて一つひとつ違うデザインを印刷するというオンデマンドの発想を、アパレルの事業に転換できないかと考えたのです。

アパレル業界は、世界2位の汚染産業で、過剰生産や生産工程における水質汚染、大量の温室効果ガスなどが課題です。その一因は、主流のビジネスモデルが、生産後に売るという「供給ファースト」である点にあると言われています。そこで、アパレル事業においても、写真のように注文が入ってから生産する「需要ファーストモデル」を促進できないかと、アパレル事業に参入しました。

ーー原宿・神宮前にある「HATTO CREATIVE PLAZA」にはどのような想いが込められていますか?

HATTO CREATIVE PLAZA内でインタビューを受ける様子

HATTO CREATIVE PLAZAは、プリンターがあるファクトリー部分と、一般の方も利用できるカフェ部分で構成されています。クリエイターがコーヒーを飲みながらアイデアを考え、すぐにプリンタ―で形にし、商品ができたらカフェスペースやオンラインショップで販売するーー。そんな循環を目指しています。また、カフェという機能をつけたことで、人が集まりやすい、まさにアパレルの広場を目指しています。サステナブルなアパレルの実現は、一社ではなかなか難しいと考えているので、まずは関係者が集う場所をつくり、対話が生まれれば嬉しいです。

HATTO CREATIVE PLAZAの目玉となるのは、日本初導入となる、Atlas MAXという衣類プリンターです。仕立て済みの服に、小ロットからクオリティ高い立体プリントや、糸を使わない刺繍風プリントをすることができる最先端プリンターです。発色もとてもきれいで、絵画なども原画に近い色で出力ができます。Atlas MAXは、必要な時に必要な分だけ印刷する「オンデマンドプリント」に特化しています。売れ行きに応じて追加生産の小回りがきくので、発注者は在庫を抱えすぎることなく、むだを出しにくいものづくりができます。

これまでの大量生産のモデルではコスト面などで商品開発をあきらめていたアーティストやクリエイターの方たちが、オンデマンドプリントを活用することで、自分たちのアイデアを形にできる場所、まさにCREATIVE PLAZAとなっていくことを目指しています。

ーーKornit Digitalさん以外でも、他社と取り組みを行われているようですが、どのような取り組みがありますか?

「つくるんです®」という、立体ウッドパズル・ミニチュアハウスを展開するブランドでは、絶滅危惧種の生き物をモチーフにしたシリーズを出しています。木のピースを組み上げてつくる立体パズルに図鑑がセットになっているので、つくりながら楽しく絶滅危惧種のことを学べる商品です。博物館や水族館に監修していただいており、かなり本格的な図鑑、パズルに仕上がっています。このシリーズは、商品の売上の一部を保護団体に寄付しています。

それから、つくるんですの商品開発の過程で出た木の端材やミニチュアハウスのパーツは、中庄株式会社がやっているチョキペタスというプロジェクトに寄付しています。チョキペタスは、さまざまな会社から集めた端材を活用し、子どもたちが自由に工作をできる出張図工室を開いています。本来捨てられてしまうものに、子どもたちが再度命を吹き込んでくれるのは、作り手としても嬉しいことです。

SDGsはまだまだ手探り。北欧視察や経営者との対話を経て、インプットとアウトプットを繰り返す

ーーSDGsを進めるにあたり、社長として行っていることはありますか?

正直、SDGsの取り組みは手探りで、まだまだ道半ばです。日々、他の企業の経営者にヒアリングをしたり、海外の動きにアンテナを張ったりしています。先日、ノルウェーへ出張に行き、現地のダイバーシティの進み具合を目の当たりにして、圧倒的な差を感じました。そこではダイバーシティやESGがあたりまえになっていて、もはや議論すらありませんでした。

日本の状況を知っている現地の女性CEOから「男女比は地球上50%ずつで、メンバークラスだと50%の女性がいるのに、マネージャーや部長など、レイヤーが上がれば女性は減っていくのは、明らかに変じゃないか。女性というリソースを無駄にしている」と指摘されました。そして最後には「女性活躍を推進するためには、マネジメントがマインドセットを変え、仕組みをつくらなければいけない。今やらなければ、あなたの会社は、多分、10年後にはなくなっているでしょう」と強く言われました。

海外の経営者のマインドやダイバーシティへの向き合い方に大きな衝撃を受けました。そして、そこに至っていない自分自身の遅れを痛感し、女性活躍推進への課題意識が大きくかわりました。日本に戻ってすぐ、この学びをメンバーとも共有し、早速DE&Iの研修を実施することになりました。まずはマネージャー層とDE&Iについて動画コンテンツで学び、ディスカッションする時間を設ける予定です。

ーー現在、ダイバーシティに関して進めている取り組みがあれば教えてください。

10年以上、ストアクロスという子会社で障がい者雇用を行っています。主に和光の工場でものづくりを担っていただいています。

また、2023年の2月には、経済産業省の補助事業である「生理用品設置をきっかけにしたコミュニケーションデザイン事業」の実証実験に参加しました。1か月間、一部の事業所トイレに生理用品ボックスを設置すると同時に、生理の基礎知識や生理とはたらくについて考えるオンラインセミナーを行いました。小さな取り組みではありますが、ダイバーシティを考えるきっかけとなりました。まだまだできることはあると思うので、今後もインプットアウトプットを繰り返し、プラザクリエイトらしいダイバーシティを考えていきたいです!

さいごに

写真プリントは、顧客の需要に合わせて必要な分のみを生産できるオンデマンドな生産方法であり、長年の写真プリント事業で得た知見を生かして、サステナブルなアパレル事業に取り組んでいる点に魅力を感じました。

SDGsの推進に関しては、正直手探りであるが、できることから積極的に取り組んでいき、新たな学びがあれば吸収していきたいという新谷さんの姿勢は、目まぐるしく状況が変わる現代社会にとって、必要となる考え方なのでしょう。

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