ESGの取り組み事例10選 ー始め方からメリットまで解説

#ESG#持続可能 2022.07.25

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近年「ESG」というワードが世界のビジネスにおいて注目されるようになり、多くの企業が取り組みを行うようになりつつあります。

しかし、具体的にどのようなESGの取り組みが行われているのかわからない方も多いと思います。
そこでこの記事では、10社の事例をE(Environment:環境)、S(Social:社会)、G(Governance:企業統治)の要素に分けながらご紹介します。

ESGに取り組む際などの参考にしてみてください。

ESGとは

ESGの概要

ESGとは、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)の頭文字をとったものです。
ESGに配慮した取り組みで企業の長期的な成長を支える基盤を構築していく目的などから、現在多くの企業が取り入れています。

▼ESGについて詳しくはこちら

注目が高まるESG投資

ESG投資は投資家を中心に徐々に注視されるようになってきました。

その主な原因として、2008年のリーマンショックがあります。リーマンショック以前は企業が短期的に利益を注目することが重視されていましたが、世界的金融危機に頻したことで持続可能な長期的に利益を追求するこに重きを置くようになりました。

そこで、責任投資原則(PRI)に賛同する投資機関が増加し、長期的に利益を生み出せる企業に投資するESG投資の考え方が広がりました。
下の図は、世界各国のESG投資額となっており、世界全体では2018年から2020年にかけて約5兆米ドル(500兆円)増加しています。

日本は他国と比較するとまだ少額ではありますが、確実に増加しており、今後も増加することが予想されます。

出典:GLOBAL SUSTAINABLE INVESTMENT REVIEW 2020

 

ESGへの企業の取り組み事例10選

ESGへの企業の取り組みは多種多様であるため、ここでは現在すでにESGへの取り組みに力を入れている企業の事例を10社取り上げて、主な取り組み内容・実績を環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)の要素に分けて説明します。

取り組み事例①:ソニー

環境(Environment) 社会(Social) ガバナンス(Governance)
主な取り組み 製品のプラスチック使用量の削減 人種に関する問題への支援 マネジメントアプローチ
概要 これは海洋プラスチック汚染の問題を受けての取り組みで、2025年までに設計する新たな製品、例えばオーディオなど小型機器のプラスチック包装材を全撤廃することを計画しています。 「BLACK LIVES MATTER」など人種に関する社会不安から、人材の多様性や関連する団体の支援などに取り組んでいます。特に、人材の多様性についてはもともとソニーが強みとしていた部分ではありますが、エレクトロニクス事業では課題が残っているようで、今後エンジニアのダイバーシティに注力しています。 効果的にグループを経営するために進化を続け、取締役会の執行側からの独立性の確保、取締役会での活発な議論を可能にするための適正な規模の維持などを行っています。

■実績
ソニーは、アメリカのウォール・ストリート・ジャーナルにおけるサステナブル経営調査で世界約5500社の上場企業のなかで第1位に選出されました。

取り組み事例②:トヨタ

環境(Environment) 社会(Social) ガバナンス(Governance)
主な取り組み 二酸化炭素の排出量削減 安全への取り組み コーポレートガバナンスの充実
概要 トヨタは「新車CO2ゼロチャレンジ」という名の下に2050年までにグローバル新車平均二酸化炭素の排出量の90%削減を目標に取り組みを続けています。
具体的には、電動車の販売台数増加のためにラインナップの充実やPHEVの開発に取り組んでいます。
「交通死傷者ゼロ」を目指し、安全なクルマの開発とともに啓発活動、交通環境整備といった働きかけを行っています。
また、これまでの事故に学び、商品開発に活かすよう取り組んでいます。
株主や顧客、取引先、地域社会、従業員と良好な関係を築きつつ、顧客が満足するような商品を提供し続けることを重要視し、コーポレートガバナンス体制を構築しています。

■実績
トヨタは第2回ESGブランド調査におけるESGブランド指数で第1位を獲得しています。

取り組み事例③:花王

環境(Environment) 社会(Social) ガバナンス(Governance)
主な取り組み 商品に使用する材料への配慮 地域社会と連携した社会課題解決への支援 ESGコミッティの設置
概要 環境に配慮した材料選び、詰め替えや付け替え商品を増加させ、ゴミの削減につなげるなどの取り組みを行っています。 社会課題をビジネスの手法での解決へ向けて次世代の社会起業家の育成支援や地域の方々へ向けたコンサート、ボッチャの普及と振興の支援など様々な活動に従事しています。 ESG戦略の方向性を議論したり、決定したりする組織を取締役会の下に設置しています。

■実績
花王は第1回ESGブランド調査におけるESGブランド指数で第5位を獲得しています。

取り組み事例④:SOMPOホールディングス

 

環境(Environment) 社会(Social) ガバナンス(Governance)
主な取り組み CSOラーニング制度 女性活躍の推進 指名委員会等設置会社への完全移行
概要 環境問題や社会問題に貢献できるような人材の育成を行う制度で、大学生や大学院生を対象として環境分野のCSO(Civil Society Organization)で長期のインターンシップを行っています。 グループ全体の女性管理職の割合を増加させることを目標に女性社員育成プログラムを行っており、グループ各社で独自のプログラムも実施しています。 監視役会設置会社でありつつ、指名・報酬委員会とのハイブリッド型の企業でしたが、完全に移行を行い、指名委員会等設置会社としました。これによって、​​監督と業務執行の分離が実現し、より強く透明性と公正性を示すことができるようになりました。

■実績
SOMPOホールディングスは、東洋経済新報社の行っている「ESG企業ランキング」で第1位を獲得しています。また、経済産業省および東京証券取引所が女性活躍推進に優れた上場企業を「中長期の企業価値向上」を重視して選ばれる「なでしこ銘柄」に選定されています。

取り組み事例⑤:オムロン

環境(Environment) 社会(Social) ガバナンス(Governance)
主な取り組み 化学物質の削減 科学分野の発展 投資家とのアクション回数を重要業績評価指数に設定
概要 使用化学物質の管理に力を入れていたり、水銀削減への貢献をしていたり、フロン・水銀の全廃をしていたりと化学物質の使用頻度が比較的高いオムロンならではの取り組みを行っています。 財団と協力しながら高等専門学校生を対象とした制御技術教育キャンプや科学技術振興に対しての支援を行い、科学技術の発展へ向けて活動しています。 ターゲットとなる投資家とのアクション回数、例えば個別面談の回数などを重要業績評価指数に設定することでコーポレートガバナンスにおける基本原則である株主との対話を重んじています。

■実績
オムロンは東洋経済新報社の行っている「ESG企業ランキング」で第2位を獲得しています。

取り組み事例⑥:j.フロント リテイリング

環境(Environment) 社会(Social) ガバナンス(Governance)
主な取り組み サーキュラー・
エコノミーの推進
ワーク・ライフ・
インテグレージョンの実現
第三者機関による
取締役会評価の実施
概要 2030年までを目標に廃棄物の50%削減やエコフによるリサイクル回収量累計3000トン、シェアリング・アップサイクル等事業の参入や拡大といった具体的な数値を設定しての取り組みを行っています。 多様性と柔軟性を実現する働き方で従業員とその家族へプラスに作用するようにしています。例えば、育児・介護離職率0%や育児休職取得率100%などの働きやすい職場づくりに力を入れています。 事前アンケートに基づいて、第三者機関が社内社外両者の取締役全員に対する個別インタビューを行い、その結果を分析した報告書に基づいて取締役会で協議する形をとって、客観的な視点からの評価を行っています。

■実績
j.フロント リテイリングは、東洋経済新報社の行っている「ESG企業ランキング」で第3位を獲得しています。

 

取り組み事例⑦:日本郵政

環境(Environment) 社会(Social) ガバナンス(Governance)
主な取り組み 環境配慮型郵便局の推進 地域活性化ファンド お客様満足推進
概要 クロス・ラミネイティッド・ティンバーという​​コンクリートや鉄に比べてCO₂の発生を抑制することのできる材料を使用しつつ、環境負荷の小さい自家発電等を組み合わせた環境に配慮した郵便局の建設を推進しています。 地域金融機関と連携して累計32のファンドに参加しています。さらに、地域ファイナンスにおいて地方債や地方公共団体貸付といったプロジェクトファイナンスの協調融資にも参加するなど貢献しています。 顧客からの声を集約・分析し、必要な改善を行うことで顧客が満足できるような商品・サービスなどの提供に取り組んでいます。そのための独自の体制なども構築しています。

■実績
日本郵政は、東洋経済新報社の行っている「ESG企業ランキング」で第4位を獲得しています。

取り組み事例⑧:野村総合研究所

環境(Environment) 社会(Social) ガバナンス(Governance)
主な取り組み NRIグリーンスタイル活動 NRIグループの
独占禁止法等遵守の方針
適切な情報開示
概要 コンサルティング活動による環境負荷低減を行っており、2国間クレジット制度(JCM)に関してや省エネルギー地域相談プラットフォーム構築支援などを行うことで環境負荷低減に貢献しています。 国内外の​​独禁法規制を遵守しながら公正な競争を行うことを方針としており、行動基準やリスクへの対応について公開しています。 長期経営ビジョンや中期経営計画といった事業計画の開示や情報開示会議を設置することで適正性を確認するように取り組んでいます。

■実績
野村総合研究所は、​​アメリカのS&P Dow Jones Indices社とスイスのRobecoSAM社が共同開発した、世界初のESG株式指標で、持続可能性に優れた企業が構成銘柄として選定されています。

取り組み事例⑨:BMW

環境(Environment) 社会(Social)
主な取り組み 二酸化炭素排出量削減とEV車の販売台数の増加 次世代リーダー育成プログラム
概要 2030年までに二酸化炭素の排出量を100万人都市の20年間分に匹敵する2億トン分を減少することと世界販売台数の半分をEV車にすることを目標として発表しています。 次世代を担う若い世代のリーダー人材を育成しており、世界ユース・サミットへのサポート、児童対象のワークショップ、オンライン教育プログラムなどの活動を実施しています。

■実績
BMWは、S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスの世界およびヨーロッパのダウ・ジョーンズ・サステイナビリティ・インデックス(DJSI)の評価で「自動車」セクターで第1位を獲得しています。

取り組み事例⑩:ユニリーバ

環境(Environment) 社会(Social)
主な取り組み 水の管理 将来の労働力への支援
概要 製造現場で使用する水の量の削減や高い水質を供給するための支援を行っています。​​また、消費者が家でより少ない水をより簡単に使用できるようにするウォータースマート製品を開発しています。 将来の労働力の中心を担うであろう若者の支援を行うためのプログラムを実施しており、南アフリカやケニアといった地域でも活動を行っています。

■実績
国際シンクタンク・戦略コンサルタント会社のGlobeScanとSustainAbilityが行っている2020年リーダーズ調査で第1位を獲得しています。

企業がESGに取り組む3つのメリット

メリット①:投資家からの評価が高まり企業価値向上につながる

上記にもある通り、近年、ESGは投資家の間で非常に注目されています。
それは、ESGへ積極的に取り組みを講じている企業は社会貢献を行い、社会的責任を果たしているという観点から信用できる会社であると感じられるためです。
また、ESGへの取り組みを行っている企業に投資することで投資家自身も間接的に社会に貢献できたり、自身の力だけでは解決できない課題の改善につながったりするためでもあります。
このように、社会がより良い方向へ向かうことへの期待によって、ESGへの積極的な取り組みを行っている企業の企業価値自体が向上するケースが多いです。

メリット②:SDGsの達成にも貢献できる

SDGsは17項目の持続可能な開発目標であり、社会課題の解決を目指しています。
一方で、ESGのEは環境(environment)、Sは社会(social)、Gは(governance)であるため、ESGの基準で取り組みを実施することで企業はSDGsの達成にも貢献することができ、投資家はSDGsを達成するために投資していることになります。
つまり、ESGはSDGsという目標を達成するための手段であると言えます。
そのため、ESGへの取り組みを基準として企業価値を判断すると必然的にSDGsへの貢献度が高い企業が価値の高い企業となってきます。
例えば、自動車会社では排気ガスによる二酸化炭素の排出量を抑えるような取り組みを行ったりすることで環境に配慮した取り組みを行うことで、ESGのE(environment)部分にSDGsの項目13「気候変動に具体的な対策を」や項目15「陸の豊かさも守ろう」などを中心とした部分に貢献できているため、ESGの観点でもSDGsの観点でも優良企業であると判断されるます。

メリット③:従業員のロイヤルティが高まる

社会課題への取り組みを積極的に行う上に情報開示をしっかりと行い、透明性の高い会社は、従業員の愛社精神を高めることにつながります。
また、ESGへ高い貢献を果たしている企業はダイバーシティを受容しているといった従業員へ対して多様な働き方を認めているなど働きやすい環境が整っているケースが多くなります。
従業員のロイヤルティが高まることで会社全体の雰囲気の向上や従業員のやる気を引き出すことのできる会社づくりを行うことができ、それが企業の取り組んでいるサービスや商品の質の向上につながるようなメリットに導くことができます。

ESGをはじめる4つのステップ

ステップ①:企業内の情報を整理する

まず、自社の情報を整理しましょう。
自社にはどういった部分が不足していて、何を改善するべきなのか理解できるようになり、何から着手していくべきなのか、ESGへの取り組みで改善する見込みはありそうなのかが把握しやすくなります。

ステップ②:EとSとGの要素に分けて検討する

情報の整理ができたところで自社の不足している部分でESGへの取り組みを用いることで改善できそうなのはどの点なのかやどういった取り組みであれば実行できるのかEとSとGの要素に分けてそれぞれ検討します。

ステップ③:ビジョンを掲げる

事例でもご紹介した通り、上手く導入につなげられている企業では皆ビジョンを掲げています。そうすることで従業員の意識を集中させるとともに社外にも今後どういった取り組みを行っていくのか提示することができます。

ステップ④:情報開示をしつつ、実践する

最後に、企業の透明性や公正性につながる情報開示をしながら実践することでどのような取り組みをどういった形式で実施していて、どの程度の社会貢献につながっているのか示すことができます。

まとめ

ESGの導入は社会貢献をすることにつながるのはもちろん、自社の長期的な利益向上につながります。
今回取り上げた具体例などを参考にしつつ、自社に合った形で取り入れることでより良い経営戦略に導くことができると思いますので、ぜひ検討してみてください。

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