ESGスコアとは?評価機関やESGスコアランキング、算出方法を紹介

#ESG#ESG経営#SDGs#持続可能#金融 2023.07.11

この記事をSNSでシェア!

 

ESGスコアは、企業や投資対象の環境、社会、ガバナンスの持続可能性を総合的に評価する指標です。その企業が「ESGに貢献する活動をどれだけ行っているか」や「ESGに関するリスクへどのような対応をしているのか」を評価します。

ESG投資の普及とともに注目されるようになり、ESG投資における重要な評価ツールとなっています。近年、様々なESGインデックスが乱立する中で、ESGスコアとはそもそも何であり、どのような特徴があるのかを知ることは、より効率的なESG投資に繋がります。

この記事では、ESGスコアについて解説します。

【この記事で分かること】

ESGスコアとは

地球

ESGスコアの定義

ESGスコアとは、企業がどれだけESG活動に取り組んでいるかを示す数値のことです。ESGとは、環境(Environment)・社会(Social)・企業統治(Governance)の頭文字を組み合わせた言葉です。現在世界で注目されており、地球温暖化や気候変動などの社会問題の解決に貢献する活動であると言われています。このESGの各要素に貢献するような活動を行う企業ほど、ESGスコアが高くなります。

投資家がESGスコアを利用するようになった背景

近年のESG投資の普及により、投資家がESGスコアを利用するようになりました。ESG投資とは、投資先の企業の選定時に売上や資産などの財務情報だけでなく、ESGへの取り組みの要素も考慮する投資です。投資家は、ESGスコアを利用することで、効率的にESG投資の投資先の選定を行うことができます。

ESGスコアは、シンクタンクや評価会社などが算出し、同業の複数社間などで比較できるESGスコアランキングの形式で発表される場合が多いです。

ESGスコアを算出する主な評価機関5選

ここでは、ESGスコアを算出・公開する主な機関を紹介します。ESGスコアランキングはこのほかにも様々なものがあり、活用方法や信頼性、対象の企業などにより自身で取捨選択することが重要です。

1.MSCI(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル)

MSCIとは、アメリカのニューヨークに本社を置く企業であり、株価指数を始め、様々なインデックス(指数)を世界に提供しています。MSCIが算出するMSCI ESGレーティングでは、企業や株式、債券、投資信託、ETF、および国などのESG リスクと、同業他社と比較してそれらのリスクをどの程度適切に管理しているかを基準に、ESGスコアを算出しています。

2.FTSE Russell

FTSE Russell

出典:FTSE Russell

FTSE Russellは、ロンドンに拠点を置き、株価指数をはじめとする金融指数の提供を行う企業です。ESGや気候変動データを用いた各種ESGインデックスや、分析ツールなどを提供しています。調査対象企業の事業特性にもよりますが、14のESGテーマと全部で300個以上の調査項目を用いて評価を行います。また、調査対象の企業への負担を軽減するため、公開情報を主な情報源として調査を行います。

3.Sustainalytics

Sustainalyticsは、企業のESG評価・格付けを専門に行うESG評価機関の1つです。創業以来30年以上、世界の資産運用会社や年金基金と提携し、ESGレーティングを行ってきました。異業種間でのESGスコア比較を可能とするために絶対値スコアを採用しており、機関投資家による多様なESG評価ニーズに応えています。

4.S&P Global

S&P Globalはアメリカに本社を置く金融サービス企業です。ESG評価機関としての歴史は長く、20年以上の実績があります。公開ESG情報のみを用いる評価では、ESG情報を積極的に公開している企業の評価が高く出てしまうため、公開ESG情報だけでなく綿密なアンケート調査による評価を行っています。

5.アラベスクグループ

アラベスクグループは資産運用事業を中核にサステナビリティ金融事業を推進してきた会社です。AIを用いた運用支援プラットフォームの開設など、野心的なアプローチが特徴です。

日本企業のESGスコアランキング2023

この項目では、ESGスコアが高い企業と、その企業の取り組みを紹介します。

1.日本電信電話(NTTグループ)

NTTドコモやNTT東日本/西日本等を擁する日本最大の通信系企業グループです。通信事業では大規模なデータセンターや通信設備の莫大な電力消費が課題となりますが、NTTグループは2030年度の再生可能エネルギー利用割合を30%以上にすることを目標に、自グループ内で再生可能エネルギーの電源開発に取り組むとともに、低電力消費の通信技術の開発にも取り組んでいます。

2.三井住友フィナンシャルグループ

三井住友フィナンシャルグループは、三井住友銀行などを傘下に置く、国内3メガバンクのうちの1つです。ESGを考慮した金融商品の開発やグリーン貯金、グリーンボンドなど様々な手段を通じた金融面でのESG推進や、環境配慮型不動産事業、再生可能エネルギー事業、コンサルティングなど、グループ全体を通じて多様な手段で環境分野に貢献しています。

3.SOMPOホールディングス

SOMPOホールディングスは、損害保険ジャパン(損保ジャパン)などの保険会社を中心とするホールディングカンパニーです。SOMPOホールディングスでは、自社のCO2排出量をスコープ1(直接排出量)、スコープ2(エネルギー起源間接排出量)、スコープ3(その他の間接排出量)とバリューチェーン全体で排出段階ごとに分類した上で、各スコープの排出削減に取り組んでいます。TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の検討段階では保険業界の大企業としてパイロットワーキングに参加することで保険業界でのTCFD開示促進に貢献し、現在はTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)の検討にも参加するなど、科学的な分析をもとにした取り組みを積極的に行っています。

4.東京海上ホールディングス

東京海上ホールディングスも保険会社を中心とするホールディングカンパニーで、東京海上日動火災保険などを傘下に置き、損害保険グループとしては国内最大です。東京海上ホールディングスは、再生可能エネルギーの導入や低電力ビルの建設などにより環境負荷を抑えるだけでなく、大規模なマングローブ植林プロジェクトの実施により生物多様性の保全にも努めています。また、災害時に迅速な損害保険対応を可能とする体制の構築など、社会面でもESGに取り組んでいます。

5.第一生命ホールディングス

第一生命ホールディングスは、第一生命保険を筆頭とする保険ホールディングスです。第一生命ホールディングスは、優れたESG活動を行う企業に優先的に投資をするESG投資を行うだけではなく、公式サイトの「ESG情報インデックス」では自社のESGへの取り組みを各要素ごとに詳細に解説しています。

第三者機関によるESG取り組みの算出方法

ESGスコアは、基本的に企業の公開情報や、企業へのアンケートなどを通じて各企業のESGへの取り組み状況を調査・整理し、その度合いを各ESG評価機関が独自に構築したスコアリングモデルにしたがって計算することで算出されます。企業の公開情報は、ESGレポートやSDGsレポート、統合報告書などといった名前の報告書で毎年発表する企業が多いです。

ESGスコアは、基本的にはE・S・Gの3項目のそれぞれのスコアの重み付き平均値(=加重平均。この“重み”の付け方により、どの要素を重視するのかが変わります)という形で算出されることが多いです。また、ESGの3要素のうちどれか1つ、または更に限定して、例えば二酸化炭素の排出量など、特定のテーマに絞ったESGスコアも存在します。

ESGスコアが重視される理由

分析

ESG投資は長期的な持続性や収益性を期待できる投資方法であり、環境や人権などへの社会的な意識の高まりから広まりました。ESG投資の普及とともに、各企業のESGスコアも重視されています。

ESG活動は、企業の活動ごとに質・量・種類が異なるため比較が難しいです。しかし、ESGスコアに換算することで、異なる企業間のESGへの貢献度を比較できます。投資家が投資先候補企業のESG情報一つ一つを精査し、比較することは難しいため、シンクタンクやその他の評価機関が算出したESGスコアランキング等を利用することで、ESG投資を効率的に行うことができます。

ESGスコアを高めるための取り組み2選

プロジェクト

ESG投資家はESGスコアを参考に投資先を決めるため、ESGスコアを高めることで企業は投資を呼び込むことが可能です。では、企業が自社のESGスコアを高めるためにはどのようなことができるでしょうか。

1.ESG情報を積極的に開示する

まず1つに、自社のESG情報を開示することでESGスコアを高めることができる可能性があります。ESG評価機関がESGスコアを算出するときには、各企業が公開するESG情報が参考にされるため、自社のESG情報を社外へ積極的に公開することでESG評価を高めることができます。

自社のESG情報は、「ESGレポート」や「統合報告書」といった名前で年に一回公開されることが多いです。また、自社のホームページで公開される場合もあります。ESGレポートについての詳細や作成方法は、以下の記事で詳しく紹介しています。

▶関連記事|ESGレポートとは?-作成する目的や重視される背景、作成手順も紹介 | SDGs CONNECT (sdgs-connect.com)>>

2.社内の労働環境や資本金の配分を見直す

ESGのうち企業統治(Governance)は、環境(Environment)や社会(Social)と比べて軽視されやすい傾向にありますが、社内の労働環境や資本金の配分を見直すことで、スコアを高くすることができます。他にも汚職の防止や社員の多様性の向上、情報の透明性向上などによって企業統治(Governance)のスコアを高めることが可能です。

これらについても、改善点や改善目的を開示することで、ESG評価機関などに正しく評価されやすくなります。

まとめ

この記事では、近年注目のESG投資において欠かせないESGスコアについてご紹介しました。ESGスコアはESG情報の開示項目などと同様に、国際的に統一の潮流もあるものの、依然世界で様々なものが乱立しています。ESG投資の正しい知識を身に着けるとともに、自身の行いたいESG投資にフィットするESGスコアを取捨選択することで、より効率的なESG投資を目指しましょう。

この記事をSNSでシェア!

  • ランキング

    「SDGsは胡散臭い」と言われる5つの理由【解説】|原因から解決法まで徹底解説

    《完全網羅》SDGsの7つの問題点|現状の課題と解決策

    《あなたは正解できる?》SDGsを目標別のクイズで学ぼう!SDGsクイズ

    新着記事

    SDGsをビジネスチャンスに|日本サニパックにとってサステナビリティとは

    SDGsの基礎知識

    食品ロスとは?原因や日本と世界の現状、家庭でできる対策を紹介

    もっとみる

    おすすめ