アサヒが目指す楽しく美味しいサステナビリティ|誰もがお酒の場を楽しめる社会へ

#サステナビリティ#ダイバーシティ 2022.12.21

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東京都墨田区にあるアサヒグループホールディングス(以下、アサヒ)。カルピスや三ツ矢サイダー、アサヒスーパードライなどのロングセラー商品は好きな人も多いのではないだろうか。

今回はそんな飲料事業が有名なアサヒグループにインタビューを行い、各自が担当しているサステナビリティのテーマについて詳しくお話を伺った。

サステナビリティ推進は、事業活動を通じて取り組むことで、持続可能な社会への貢献に繋がる。

ーー自己紹介をお願いします。

火置:2017年からグループのサステナビリティ推進を担当しています。現在は、アサヒグループジャパンのコーポレートコミュニケーション戦略部の戦略グループリーダーとして、日本のグループ会社とともに、サステナビリティの推進に取り組んでいます。

染谷:2019年よりサステナビリティ関連の業務に従事しています。現在はアサヒグループジャパンのコーポレートコミュニケーション戦略部コミュニティグループ、及びアサヒユウアスたのしさユニットにて、地域コミュニティとの連携による価値創造に取り組んでいます。

京谷:アサヒビールと電通デジタルが共同で設立したスマドリで、2022年4月よりブランドマネージャーを担当しています。スマドリ=「飲み方の多様性」を広めるべく、2022年6月にオープンした「スマドリバー渋谷」を中心に、主に飲めない方へのマーケティング提案を行っています。

ーーアサヒについて教えてください。

火置:アサヒは、日本、欧州、オセアニア、東南アジアに4つの拠点を持つグローバル会社です。

グループ全体で見てみると、日本に比べて売上収益、従業員数、事業利益において海外拠点の比率が多くなっています。売上は日本が最も高いですが、近年は特にグローバル化しています。

また最近では、2022年の1月に国内の事業会社を統括するアサヒグループジャパンが誕生したほか、アサヒユウアスやスマドリなどの子会社が設立され、アサヒグループの中で色々な変化が起こっています。

「アサヒ」と聞くと、アサヒビールを思い浮かべる方が非常に多いのですが、事業領域はお酒のほかに、飲料や食品など、多様に展開しております。

ーーグループ全体でどのようなビジョンを掲げていますか。

火置:グループ共通で“Asahi Group Philosophy”を掲げています。

私たちは、Our Missionにあるように「期待を超える」こと、常にチャレンジしていくことを目指しています。

ビールなどの嗜好品は生活必需ではありません。しかし、人の生活をより豊かにできると考えています。Our Valuesにある「感動の共有」という言葉には、大小関わらず、人々の感動の共有を作り出すお手伝いをしていこうという思いが込められています。

ーーサステナビリティビジョンについて教えてください。

火置:サステナビリティビジョンは、グローバル共通で掲げている「Cheer the Future」です。

私たちは自然の恵みを使って事業をさせていただいています。例えばビールだったら麦などを指しますが、こうした自然の恵みを使うだけではなく、地球環境に還元していかなくてはならないと考えています。だからこそ、かけがえのない未来を元気にするという「Cheer the Future」を大切にしています。

そのため、サステナビリティも慈善的に取り組むのではなく、長期的な視点で事業活動を通じて取り組むことで、持続可能な地球や社会に貢献したいと考えています。その結果として、私たちが目指す、楽しい生活文化の創造、人々の生活を豊かする“Asahi Group Philosophy”が実現できるのだと思います。

喜ぶ人の顔が見える事業活動を

ーー2022年1月からアサヒユウアス株式会社が事業化されたと伺いました。

染谷:アサヒユウアスは、地域課題の解決を目的とし、サステナブルを事業の柱にした事業会社です。

2022年の1月に新設され、現在は社長と兼務者の計11名で運営しております。コンパクトな組織ですが、サステナブルなクラフトビールやプロダクトを作ったり、イベントを運営したりしています。

アサヒユウアスでは「喜ぶ人の顔が見える事業活動」を掲げているのが大きな特徴です。アサヒビール、アサヒ飲料は、マスでのマーケティング(不特定多数の顧客へのマーケティング)が中心になりますが、アサヒユウアスの場合は、ともに喜ぶ人、関わる人たちの顔が見える範囲での事業活動をとても大切にしています。地域や小さなコミュニティなど、共創パートナーの存在がとても大事な要素だと感じます。

染谷:アサヒユウアスという社名は2021年に従業員みんなで考えました。

自社単独で終わってしまうのではなく、「あなた(YOU)と私たち(US)で共創する、明日を共創する。また、朝日が昇って夕日が沈んで、明日が来る。」というような自然がめぐるイメージを体現しています。

会社のパーパスは『「たのしさ・おいしさ・ここちよさ」がめぐる未来を、あなたと私たちで共創する。』です。

サステナビリティは、我慢を強いられる、楽しくない、美味しくないというネガティブなイメージになってしまいがちですが、アサヒが取り扱うサステナビリティなので、楽しく、美味しい要素を1番大切にしています。

ーー具体的にどのような取り組みをされていますか。

染谷:環境にやさしい素材を使った「森のタンブラー」や使ったあとに食べられる「もぐカップ」、やむなく廃棄される素材をアップサイクルした「サステナブルクラフトビール」など楽しみながら、消費行動自体を変革するプロダクトを提供しています。

パナソニックとの共同開発からスタートした「森のタンブラー」は、現在、地域の素材を活用することで、地元の方に愛着を持って使っていただくことで、持続可能な資源利用推進を目指しています。最近では、パンダが有名な和歌山県のアドベンチャーワールドとのコラボで、「パンダバンブータンブラー」を作りました。パンダは柔らかい笹の部分を食べ、竹の硬い部分は食べないため大量のごみが発生して困っているというお話を伺いました。そこで、パンダの食べなかった部分の竹でタンブラーを作ることになりました。

また、イベント自体のごみを無くす取り組みのプロデュースもしています。
イベントを開催する際、ドリンクの提供に大量のプラカップを使用し、ごみが大量に出てしまうという課題がありました。2022年7月には「つくばクラフトビアフェスト2022」にSDGsパートナーとして参画し、イベントにおけるリユースカップの利用促進とアップサイクルに取り組んでいます。実際に、焼却プラカップ約35,000個・CO2換算で約2.6トンの削減につなげることができました。

イベントをプロデュースしてみて、フードの容器もリユースできるものに変えていかなくてはいけないという課題も感じたので、今後は自治体などとも連携して、使い捨てプラスチックごみがゼロのイベントのプロデュースをしていきたいですね。

すべての人に楽しく、自由な飲み方を提供したい

ーーホームページなどで「スマドリ」という言葉を見かけましたが、これはどういった意味なのでしょうか。

京谷:スマドリは「スマートドリンキング」の略称です。

スマドリでは、「飲み方を、もっと自由に、もっと自分らしく」をビジョンに掲げ、「飲み方の多様性」の実現を目指しています。

世の中には、お酒を飲める方もいれば、飲めない方、あえて飲まない方などがおり、飲み方も多様化してきています。弊社の調査結果によると、20~60代のお客さまの約半数が家でお酒を飲まず、特に20~30代の約半数のお客さまはお酒を飲まないということが分かりました。また、特に若い世代の飲めない方、あえて飲まない方々にとって、お酒の場を楽しめるオプションが少ないという課題も見えてきました。

この結果を受けて私たちは、アルコールが入っている、入っていないに関わらず、その場の雰囲気や、コミュニケーションを誰もが楽しめるべきだと考えました。私たちの商品を通じて飲むことの価値を提供していきたい、そんな思いでスマドリが生まれました。

アルコール関連問題は、SDGsの健康分野でも目標の1つとして設定されており、国内酒類事業のリーディングカンパニーであるアサヒビールだからこそ、お酒の提供に関する社会的責任があると思っています。社会的責任を果たしつつ、経済的価値を生み出せるのがスマドリだと考えています。

ーーアサヒが独自で掲げている「飲みのダイバーシティ」について教えてください。

京谷:「飲みのダイバーシティ」という言葉は非常にキャッチーなのですが、アサヒグループのマテリアリティとしては「責任ある飲酒」を掲げています。

お酒はコミュニケーションを円滑にしてくれたり、一日の労を労うお供になってくれたり、本当に素晴らしいものだと思っています。一方で、飲み方を間違えてしまうと健康被害や社会問題になることもあります。私たちは、責任を持って健全な飲酒文化を推進するという、非常に重要なマテリアリティを定めており、このマテリアリティに沿って、不適切な飲酒や新しい飲用機会の創出によるアルコール関連問題の解決に取り組んでいます。

ーー具体的にどのような取り組みをされていますか。

京谷:「ビアリー」や「ハイボリー」などのアルコール度数の低い商品を発売したほか、2022年6月に「スマドリバー渋谷」をオープンしました

このバーは飲めない人も、飲める人も、一緒に楽しめるバーをコンセプトにしています。

メインターゲットは、飲まない人の中でも、飲みの場は好きで外飲みは参加するような、社交的な20代の方々で、その方々に楽しんでもらえるような雰囲気やメニューなどを提供しています。

お酒が飲めない方にとってそもそも選択肢が少ないことが課題だと思っているので、そういった方にどんなものが提供できるのかをこれまで研究してきました。来店者の70%の方が20代の方で、狙い通り若年層にご好評いただいております。

また、あえて渋谷という立地を選んだことにも理由があります。

最初は恵比寿や表参道などもプロジェクトメンバーで歩き回りました。しかし、検討していく中で、渋谷区がハロウィン時期の飲酒行為などさまざまな悩みを抱えていらっしゃることが分かりました。

適正飲酒に対して、私たちも渋谷区の方々も共に解決したい課題があり、また新しい文化の発信地であるという理由から、渋谷の中心地であるセンター街という立地を選びました。現在、渋谷区の外郭団体である一般社団法人渋谷未来デザイン*と連携して、渋谷スマドリ宣言も打ち出しています。

一般社団法人渋谷未来デザイン:多様性あふれる未来に向けた世界最前線の実験都市「渋谷区」をつくるイノベーションプラットフォーム。
引用:渋谷未来デザイン

スマドリバー渋谷【提供:アサヒ】

ーー今後の展望を教えてください。

火置:アサヒグループが製造販売するお酒、飲料水や食品は、赤ちゃんからお年寄りまで、多様な生活者の方に広く愛されてきました。このような生活者との接点を活かせば、アサヒグループができることはまだまだあるなと感じています。事業活動を通じて生活者の皆さんと一緒にサステナブルな社会を創っていきたいですね。

染谷:アサヒグループでは、2022年4月よりローカルSDGs専任リーダーが全国で活動を開始しています。自治体・地域コミュニティと連携して地域課題解決に取り組むことを目的としています。アサヒグループは長年にわたりたくさんのコミュニティに支えられ、共に楽しい生活文化を作り成長してきました。これからも楽しい生活文化を受け継いでいくために、コミュニティと共にアサヒとしてできることを拡大していきたいです。

京谷:お酒にまつわるアンコンシャスバイアスや、お酒の場での心無い言動、不適正飲酒などがなくなる社会を、スマドリを通じて造っていきたいです。誰もが分け隔てなくお酒の場(アルコール度数の有無にかかわらず)を楽しめ、お客さまの生活の一部として自然に取り込まれていることを目指していきます。

さいごに

今回の取材では、飲料事業を軸にしているアサヒだからこそできる、新たな挑戦を知ることができた。

SDGsと聞くと地球規模で捉えてしまい、どうしても他人事として考えてしまうが、アサヒユウアスのように「喜ぶ人の顔が見える事業活動」を大切にすることで、より社会に浸透するスピードを速めることができるのではないかと感じた。

また、ダイバーシティと聞くと、LGBTQ+や人権の尊重などの問題が取り上げられがちだが、どんな人でも飲みを楽しめるようになることもダイバーシティのひとつであると気付かされた取材だった。

これからのアサヒの挑戦にも目が離せない。

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