【更新日:2023年12月8日 by 中安淳平】
社会課題を解決しつつ、ビジネスを成長させることが大切になってきている今、株式会社SIGNINGは社会課題の解決とビジネス課題の解決を、広告やマーケティングを通してクリエイティブなアイデアで解決することを目的としたソーシャルビジネススタジオです。そんなSIGNINGがこの度手掛けたソーシャルイシューギャラリー「SIGNAL」について代表取締役の亀山淳史郎さんと共同CEOの牧貴洋さんにお話を伺いました。
アート×社会課題
ーー今回アート×社会課題という展示を手がけられた理由について、教えてください
亀山:ここはただのギャラリーではなく、リサーチをするためのギャラリーでもあります。
社会課題をテーマとしたアート作品を見に来てくださった方たちに、アンケートへ答えていただく仕組みになっています。 来てくださった方たちの声や感じたことも含めて、社会課題をテーマにしたクリエイティブが進んでいくような場にしたいと思い作りました。実は、アートには世の中の課題を発掘する力があると考えています。 アーティストたちが社会の一部分を切り取り、新しい課題を見つけてくることがたくさんあると思いますが、そういう力をうまく借りながら、社会課題解決を進めたいと思い、アートをテーマにすることに決めました。
世の中に新しい課題のシグナルを
ーーギャラリーの名前である「SIGNAL」の意味を教えてください
亀山:「SIGNAL」とは、信号とか標識という意味の英単語ですが、世の中に対しても新しい課題のシグナルを発信するような場所にしたいなと思っています。アーティストの力も借りながら、そこに自分たちが培ってきたクリエイティブスキルやブランディングスキルとが重なり合うことで面白いものを生むんじゃないかなと思っています。
外にある作品は田村拓郎さんというアーティストと一緒に作りました。 田村さんは、道路のマテリアルで作品を作っているアーティストさんです。「SIGNAL」が、標識とか信号を発信する場所だということを一目で分かっていただけるように、表に見たことない「シグナル」を作りたいんだという話をし、それをもとに作品を作ってもらいました。なんとなく見たことのある矢印の看板が、見たことがないような動きと広がりをしており、1つの方向ではなく、螺旋状に複数の可能性を持つということを表すいい作品になりました。「あの変な看板の場所なんなんだろう」みたいな、そういう違和感みたいなものから興味を持ってもらえたらいいなと思っています。
虎ノ門の新たなコミュニティーへ
ーー第一回目の展示内容について教えてください。
牧:1回目のテーマは「ダウトフルネス」です。情報があふれている現代において、本当かどうかわからない情報にどう向き合うかはすごく大事です。あなたは何を信じるか、そもそも信じるとは何か、理性的なアプローチと感性的なアプローチの両面から皆さんに改めて考え直してもらいたいと思います。マーケティングリサーチを通じて「人々がどんな根拠をもって、何を信じ、何を疑ってるか」を1000サンプルのアンケート調査のもと、クリエイティブとして表現した展示である「Doubtfulness MAP」がこちらです。
上にいけばいくほど信じられており、下にいけばいくほど疑わしい。120の言説について信じられるかとその根拠が客観的なものか直感かをそれぞれ100段階で評価してもらい、縦軸で信じているか否か、横軸で客観化直感かを表しています。
その奥のブースには120の言説のうちの「石、経穴(ツボ)、バナナ」の3つをピックアップし、それぞれに関する迷信や神話、習慣をもとに制作された「BELIFE SYSTEM」というアート作品を展示しています。「BELIFE SYSTEM」はいわば忠実に作り込んだ嘘の情報をアートにしたものなんですが、それを鑑賞することによって「疑うこと」と「信じること」を繰り返し体験できます。鑑賞していただいた後に簡単なアンケートを行い、作品を見ることで感じた想いをアウトプットしてもらうことで、集まったデータをSIGNINGとして次なる社会課題の解決に役立てようとしています。
ーー来場者の客層について教えてください。
亀山:アート好きの方もいるし、クリエイティブビジネスに関わっている方たちも多いです。 あとは、「社会問題」というところに興味を持ってきてくださる方も多くて、いろんな方が来ます。ご年配の方も結構来てくれたりだとか、外の作品を見て入ってきてくださる若い方もいます。ある一定層の人だけではなく、幅広い層の方に来ていただけるのはとてもありがたいですね。
ーー今回の展示を通して従来の方式だと集められなかったような、情報や特徴は見られたりしますか。
亀山:社会課題への理解とか態度変容のよりリアルなデータが欲しいなというのは私たちが常に感じていたことでした。そのデータを集めるために、このような体験やアートのような感覚的なものをベースにした時に、 来場者の方々がここで感じたものを自分の中でどう消化して自分の価値観として取り入れたり、反映させたりするのかまでデータとして収集できるのは、今まではできなかったことであり、興味深いなと思っています。
ーー今後の展望について教えてください。
牧:作品を見終わった後に飲み物を飲みながら、ここでの体験を振り返ってアンケートに記入してもらう。 それを私たちはリサーチ結果として公表させてもらい、次のアクションの提案に使おうと思いますし、 アーティストの創作活動にも活かしてもらおうと思っています。そこに、企業とか団体の方たちも一緒に入ってくることで、より大きな形になるんじゃないかと思っています。今後は、テーマとその後のアクション作りを、いろんな企業や団体の方たちと共創する予定もあります。さらに、ここで溜まったデータをレポートのような形で発信をしていきたいとも思っていまして、定期的にここから発信されるものが社会課題の白書のようになればいいなと考えています。「SIGNAL」は社会課題に感度が高い人たちが集まるコミュニティーにもなれると感じているんです。虎ノ門は再開発が進み今後多くの人が来る場所になるので、そこで虎ノ門独自の文化を作るみたいなことが起きるだろうなと。その時に「SIGNAL」も新しい町の文化を作る要素の1つになることを目指しています。
さいごに
虎ノ門というオフィス街にある「SIGNAL」に足を一歩踏み入れれば、自分の価値観を見つめ直すことのできる素敵な場所がありました。今回は、「ダウトフルネス」がテーマで「疑うこと」と「信じること」について取り上げていましたが、「SIGNAL」で展示されるテーマは3ヶ月に1回変わるといいます。テーマが変わるたびに足を運び自分だけでは見つけることのできなかった発見を虎ノ門でぜひ体験してほしいと感じたひと時でした。
SIGNALサイト https://signing.co.jp/signal/
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