フェアトレード食品は、チョコレートやコーヒーという代表的なものから、アイス、スパイス、ワインなど様々な種類があります。
「フェアトレードの食べ物を実際に買ってみたいけれど、どこで買えるか分からない」「フェアトレード商品を買うときに気を付けることはあるのかな」と考える方も多いのではないでしょうか。
この記事では、フェアトレードの仕組みを踏まえて、フェアトレード商品を購入する際に気をつけるポイントや、商品を購入できる店舗やサイトについて分かりやすく解説します。
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フェアトレードの仕組み
「フェアトレード」とは貧困のない公正な社会をつくるために、発展途上国の経済的・社会的に弱い立場にある生産者と、アメリカやイギリスのような経済的・社会的に強い立場にある先進国の消費者が対立な立場で取り引きを行い、発展途上国で暮らす生産者・労働者の生活改善と自立を目指す運動のことです。
フェアトレード商品はイギリスやアメリカなどの先進国からの技術支援を受け、オーガニック農法などを活用して生産するため安心で安全な原材料由来の商品となっています。
フェアトレード食品を買う時の3つのポイント
フェアトレード商品を購入する際、「実際に途上国の生産者のためになるのか」と気になる方も多いのではないでしょうか。
では、フェアトレード商品を買うときに気をつけたい3つのポイントを見ていきましょう。
フェアトレード認証ラベルがついた商品を選ぶ
「フェアトレード」には3種類の認証ラベルがあります。国際フェアトレード認証ラベル・フェアトレード(FTO)マーク・その他フェアトレードマークの3種類です。
最も広く知られているのが国際フェアトレード認証ラベルです。このラベルが付いた商品は生産地から加工・流通、販売にいたるまで一連の流れを調べることができます。上記の画像は国際フェアトレード認証ラベルです。
そのほかにも、フェアトレード(FTO)マークとその他フェアトレードマークがあります。国際フェアトレード団体は、フェアトレード基準を満たした団体のみ加盟できるため、100%フェアトレードの団体であると認められています。
日本では、国際フェアトレード認証ラベルでもフェアトレード(FTO)マークでもなく、その他のフェアトレードマークを記載している場合が多くあります。このラベルは、企業や団体が独自に定めた基準に基づいて「フェアトレード」と標記しています。
「フェアトレード」には基準となる法律が存在しないため、国際フェアトレード認証ラベルやフェアトレード(FTO)マーク以外のラベルの場合は、本当にフェアトレード商品なのか確認することが大切です。
また一部のフェアトレード商品には、フェアトレード認証マークがついていないものもあります。これは国際フェアトレード認証ラベルや、フェアトレード団体が広まる以前から現地の生産者と取り引きをしている商品です。一部の団体では、国際フェアトレード認証ラベルやフェアトレード団体マークよりも厳しい基準に基づいて、商品を販売しています。
フェアトレードの成果をサイトで確認する
フェアトレード商品を取り扱う企業の公式サイトにて、フェアトレード活動の成果を確認することも、フェアトレード商品を買う時のポイントです。
たとえば味の素株式会社では、鹿児島県庵美群島の徳之島で栽培されるコーヒーをフェアトレード商品として取り扱っています。徳之島では台風の被害や土壌の改善、後継者不足などさまざまな課題があります。これらの課題を改善しつつ、徳之島のコーヒー生産を支援するプロジェクトが「徳之島コーヒー生産支援プロジェクト」です。
この活動は、公式サイトにてプロジェクトの活動内容や現状が公開されています。購入する商品の利益がどのようにどのように利用され、生産者の生活改善に役立っているか役立っているのか確認することで、フェアトレード商品を購入しやすくなります。
フェアトレード商品購入者の評価を調べる
フェアトレード商品を購入した人による口コミや評価は、実際にフェアトレード商品を購入するうえでとても参考になります。
インターネットなどに公開されている情報は個人差があるものの、価格や品質などリアルな感想が見られます。フェアトレード商品といえども見た目や味も重視する方も多いのではないでしょうか。
実際のレビューを確認することで、フェアトレード商品を購入する際の失敗が少なくなります。
フェアトレード食品が購入できるオンラインストア4選
ここまで、フェアトレード商品を買うときのポイントについて説明していきました。
続いて、フェアトレード商品を取り扱うオンラインストアを紹介します。
第3世界ショップ
「第3世界ショップ」では、貧困とそれによってもたらされる世界のさまざまな問題を解決することを目標に、1986年にフェアトレード事業を開始しました。現在はフェアトレード事業を通じて、日本のみならず世界各国の力でさまざまな問題を解決する「コミュニティフェアトレード」の活動を行っています。またフェアトレードやオーガニックの原材料・製法にこだわった食品から伝統工芸、地域の手仕事文化を大切にしたハンドクラフト品を取り扱っています。
第3世界ショップが取り扱う「作り手の顔が見えるフェアトレードコーヒー」は環境に配慮して作られ、誰が・どこで・どのように生産されたかわかるフェアトレードシリーズ商品です。
有機栽培や減農薬栽培で生産され、一粒一粒丁寧に手で摘み取る「ピックアップ方式」で収穫しています。生産地であるパロ・ブランコ農園、パウリーニョ農園、サンタ・フェリサ農園はそれぞれの国にてCOE入賞するなど、商品の品質が評価されています。
COE(カップ・オブ・エクセレンス) …アメリカのNPO「アライアンス・フォー・コーヒー・オブ・エクセレンス」によって毎年開催される、コーヒーの品質審査制度のこと。 |
ピープルツリー
「ピープルツリー」はフェアトレード専門ブランドです。服や雑貨、食べ物が日々の暮らしを楽しむ中で、すべてのひとがエシカルで幸せになることを目指してフェアトレード事業に取り組んでいます。
ピープルツリーが取り扱うハーブティーやジャムは、ケニアのメル地方で生産されています。1985年からイタリア政府の支援を受けて始めた「ングル・ガキルエ・ウォータープロジェクト(NGWP)」によって、メル地方は安全な飲み水と生活用水が確保され、ハーブやジャムの原材料となるフルーツやハーブの栽培が可能となりました。
メル地方で生産されるハーブは、デモファーマーと呼ばれるリーダーが先に作物を育て、栽培方法やオーガニック栽培の方法を伝えています。これにより虫から作物を守ったり、土壌の栄養を保ったり、有機肥料の作り方を教えたりするなど安定して作物を収穫できるよう工夫をしています。
Fair Select
フェアトレードオンラインショップである「Fair Seclet」は、国際協力NGOわかちあいプロジェクトが運営するオンラインフェアトレードショップです。インターネットが広く普及し、物の移動が著しい現代でさまざまな種類ある商品の中から「フェアトレードの商品を選んでほしい」という想いと、フェアトレードによって発展途上国で暮らす生産者・労働者にも「自分の人生を選べるようになってほしい」という想いをこめて事業を行っています。
取り扱う商品のうち、新商品として「手作り黒糖クッキー」があります。このクッキーはフィリピン・ネグロス島のマスコバド黒砂糖を使用しています。ネグロス島は植民地時代からサトウキビの栽培が盛んであり、島の経済を支える産業です。
1980年代、砂糖の価格暴落によりネグロスで拡大していた飢餓を解決するために立ち上げたオルタ・トレード社(ATG)は、生産者と国際貿易の中間業者として世界各国にマスコバド砂糖を輸出しています。フェアトレード商品として扱うことで、価格の変動に関わらず生産者・労働者は収入が得られ、生活が安定していきます。
マスコバド黒砂糖…西ネグロス州の有機サトウキビのこと。カルシウムやマグネシウム、鉄分、カリウムなどさまざまな栄養素がある。 |
フェアトレード食品が購入できる店舗5選
ここまでPeople TreeやFair Secletなど、フェアトレード商品を取り扱うショップについて紹介していきました。
続いて、フェアトレード商品を購入できる身近な店舗を5つ紹介します。
スーパー
私たちの身近にあるスーパーでもフェアトレード商品が販売されています。
たとえばディスカウントスーパーマーケットのオーケーストアでは、エチオピア・グアテマラで栽培された有機コーヒー豆を使用したドリップコーヒーを取り扱っています。
オーケーストア以外にも、フェアトレードを取り扱うスーパーが多数存在するため、買い物に行った際に確認してみるのはいかがでしょうか。
ナチュラルローソン
「ナチュラルローソン」は、株式会社ローソンが首都圏に展開する、健康志向の商品を取り扱うコンビニエンスストアです。
ナチュラルローソンでは2021年10月より、チョコレートブランド「バニラビーンズ」と共同開発したフェアトレード商品を販売しています。国際フェアトレード認証を取得した原材料を使用しており、さらなる商品の拡大を目指しています。
イオン
イオントップバリュ株式会社が取り扱うコーヒーやチョコレート、ジャムなどの商品はフェアトレード商品です。
2002年に行った「イオン21キャンペーン」からフェアトレード商品を取り扱い始め、コーヒーをはじめチョコレートやジャム、紅茶の販売をしています。
フェアトレードはイオンの基本理念「お客さまを原点に平和を追求し、人間を尊重し、地域社会に貢献する」に合致すると考え、今後も積極的にフェアトレード商品の販売を進めていきます。
カルディコーヒー
KALDIを運営する株式会社キャメル珈琲では、人への想いや地球への想いを大切に「地球にいいことしてる?」をスローガンとして、フェアトレード商品を販売しています。
環境と動植物保護に配慮しつつ、伝統的かつ持続可能な農法を守りながら、生産者・労働者の支援を行う「バードフレンドリー・コーヒープログラム」では、原生林に近い木陰を保ちながら有機栽培を活用し、収穫時も手摘みの栽培を実践しています。
さらにKALDIの商品である「ウーマンズハンドコーヒー」は、グアテマラで暮らす女性たちによって育てられたコーヒー豆を使用しています。この商品の利益は、女性の自立支援や社会的地位の向上、経済的環境の改善にむけて支援を行うため使用されています。
成城石井
成城石井では、社会が抱える課題と向き合い、社会と調和ある持続的な発展を目指し、ワインやチーズなどの食品を海外から直接輸入して商品を販売しています。さまざまな種類のチョコレートも取り扱っており、2016年には最大400種類ものチョコレートを取り入れました。
新商品であるチョコレートでは、「ローチョコレート」「フェアトレード」「砂糖不使用」「オーガニック」「ハイカカオ」などのキーワードをもつチョコレートを取り入れています。
ローチョコレート …チョコレートを作る際に使用するカカオ豆などの原材料を48℃以上で加熱せず、低温で作るチョコレートのこと。 |
フェアトレードが広がった背景
ここまでフェアトレードのオンラインサイトや実店舗について紹介してきましたが、実際は、なぜフェアトレードの取り組みが必要なのでしょうか。まずフェアトレードが広がった背景について説明します。
16世紀以降スペインやポルトガル、イギリスやフランスなどのヨーロッパ諸国が海外に進出するようになったことで、アジア・アフリカの国々を征服していきました。これによりヨーロッパ諸国の植民地が拡大し、現地の人を安い労働力として酷使していました。
ヨーロッパ諸国の国々は、大規模農園(プランテーション)をつくりタバコや綿花、サトウキビなどの作物を大量生産して莫大な利益を得ていました。一方支配された国々は、ヨーロッパ諸国に土地を奪われたことで生計が立てられず、プランテーションの労働者として働いていました。
第2次世界大戦前の労働者に対する不平等は、現代にも残っています。たとえば日本では、毎日コーヒーやカカオなどが大量に消費されています。しかし発展途上国で生産された商品は、とても安い価格で販売されています。さらに生産者や労働者に正当な対価が支払われていないため、健康に悪影響を及ぼしたり貧困が起こったりと問題が生じています。
「フェアトレード」の始まりは、1940年代後半にアメリカのNGOがプエルトリコの女性たちが作った手工芸品を販売したことです。当時はチャリティー活動の意味合いが強く、「慈善貿易」とも呼ばれています。
1960年代以降、発展途上国で暮らす生産者・労働者が貧困から抜け出し、安定した生活を目指す考えが広がりました。これにより「慈善貿易」が今の「フェアトレード」につながっていきます。
フェアトレードが必要な4つの理由
ここまでフェアトレードの内容と、その歴史について説明していきました。
最後に、フェアトレードが必要である理由について4つ説明していきます。
途上国の生産者の収入を安定させるため
「フェアトレード」は発展途上国との貿易で公正な取り引きを行います。そのため、発展途上国で暮らす生産者・労働者の収入は安定します。
たとえばコーヒー豆の場合、コーヒー豆の買取価格は生産地とは遠く離れたニューヨークとロンドンにて決定されます。市場は投機マネーなども流入することから、高騰したり暴落したりと価格の変動が激しい傾向にあります。
コーヒー豆の生産者・労働者は、マーケット動向の情報入手や史上への販売手段を持っていることが多くはありません。そのため中間業者に頼らざるを得ず、十分な利益を得られないことがあります。
しかし「フェアトレード」に取り組むことで、市場での価格が下落しても国際フェアトレード基準に定められている最低価格の支払いが保証され、生産者・労働者の安定した生活につながります。
投機マネー …価格変化のみに着目し、短期的な売買益を追求する売買にハイリスク・ハイリターンで投じる資金のこと。 |
途上国の子どもたちが教育の機会を得るため
発展途上国では、小さな子どもが学校に行かず生計を立てるために働いていることが多くあります。
国連児童基金(UNICEF)と国際労働機関(ILO)が発表した新しい報告書によると、世界で児童労働に従事している子どもの数は1億6,000万人です。この数は世界の5歳から17歳の子どものうち10人に1人が児童労働をしていることになります。とくにサハラ砂漠以南のアフリカに児童労働をする子どもが多く存在し、教育の機会を逃しています。
「フェアトレード」を行うことで発展途上国で暮らす生産者・労働者は安定した収入が得られ、生計を立てるために子どもが働く必要はなくなります。これにより、子どもたちが教育の時間を確保することができます。
途上国の生産者が自立するため
「フェアトレード」による生産者の収入安定は、生産者・労働者の自立にもつながります。
国際フェアトレード基準の規定により発展途上国で暮らす生産者・労働者は、経済的・社会的・環境的に持続可能な生産と支援を支える「フェアトレード最低価格」が保証されています。さらに、発展途上国の生産者と長期的な取り引きや、必要に応じて生産者への前払いなども行われています。これらの取り組みが、発展途上国の生産者・労働者の生活の安定に貢献します。
フェアトレードによって、発展途上国の生産者・労働者の収入が安定することにより、先進国の企業などに依存しなくなります。その結果、国の発展にもつながります。
自然環境を保護するため
「フェアトレード」では、環境のことも考慮し大量に農薬を使用することを禁止し、有機栽培を推奨しています。
とくにコットンの栽培において、世界中の農耕面積が約3%のみにもかかわらず、世界で使用されている殺虫剤の約16%、農薬全体の約10%がコットン栽培時に使われています。農薬は自然環境だけではく、生産者の健康にも悪影響を及ぼします。
「フェアトレード」をすることで、危険な農薬の使用を禁止するだけではなくオーガニック栽培を推奨します。さらにこの推奨により、農薬が原因であった病気による被害も減少しています。
まとめ
「フェアトレード」とは、発展途上国で暮らす生産者・労働者の生活改善と自立を目指す運動であり、1940年代後半の「慈善貿易」が発展して今の「フェアトレード」にいたっています。この活動は、発展途上国に住む生産者・労働者の収入を安定させたり、子どもたちの教育の機会を増やしたりと、発展途上国の発展に大きく貢献しているのです。
フェアトレード商品は国際フェアトレード認証ラベル・フェアトレード団体(FTO)マーク・その他のフェアトレードマークの3種類があります。企業が独自に定めた基準に基づいてフェアトレード商品として販売している場合があるため、本当に発展途上国の生産者・労働者に利益が還元されているのか、確認する必要があります。
コンビニやスーパーなど身近な場所でもフェアトレード商品は販売されているため、皆さんも購入してみてはいかがでしょうか。
SDGsCONNECT SEOライター。大学では文学を通じて、ジェンダーについて学んでいます。SDGsについて詳しくない人にとってもわかりやすく、かつ情報が正確な記事を書けるよう、心がけています。