《SDGs事例集》ANA|”社会的価値” ”経済的価値”をともに創造し、持続可能な社会の実現へ

#SDGs目標10#SDGs目標11#SDGs目標13#SDGs目標5#SDGs目標7#SDGs目標8#SDGs目標9#ジェンダー#気候変動#環境#食品ロス 2021.03.09

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【更新日:2021年9月15日 by 三浦莉奈

ANAは、環境への取り組みと社会的責任を重視する企業姿勢が評価され、2008年に、環境大臣から運輸業界・航空業界として第一号の「エコ・ファースト企業」に認定されました。また、2018年10月から、エアラインで世界初となるグリーンボンド(環境債)を発行し、環境分野における取り組みが社会から注目されています。

「あんしん、あったか、あかるく元気!」を行動指針に掲げ、環境面への配慮はもちろん、地域創生や人権保護など、さまざまな側面からSDGsに貢献するANAの取り組みをまとめました。

ANAホールディングス株式会社のビジョン / 事業

ANAの概要

旧全日本空輸株式会社は、1952年に第2次世界大戦により壊滅した日本の定期航空事業を再興することを目的に日本ヘリコプター輸送株式会社として設立しました。

持株会社制へ移行に伴い、2013年4月1日に全日本空輸株式会社からANAホールディングス株式会社へ商号を変更しています。

発足日 1952年12月27日
従業員数 185名

連結従業員数 45,849名

(2020年3月31日時点)

資本金 318,78億9千万円
事業内容 グループの経営戦略策定、経営管理及びそれに付帯する業務

ANAの事業内容

ANAグループは、航空事業を中心としたエアライングループとして、航空関連事業、旅行事業、商社事業など幅広い事業を展開しています。航空運送事業では、フルサービスキャリアとLCC(Low Cost Carrier)を保有し、国内線旅客事業・国際線旅客事業・貨物事業のネットワークを形成しています。

ANAグループの経営理念

ANAグループの経営理念は「安心と信頼を基礎に、世界をつなぐ心の翼で夢にあふれる未来に貢献」することです。
「挑戦し続ける」「強く生まれ変わる」「いつもお客様に寄り添う」気持ちと、「心の翼」を持って永続的にこれからの社会の発展に貢献し、「夢あふれる未来」創りの一翼を担っています。

ANAグループの行動指針

ANAグループでは、全社員が理念の達成に向け、持つべき心構えや取るべき行動を示した行動指針「あんしん、あったか、あかるく元気!」を掲げています。安全、お客様視点、社会への責任、チームスピリット、努力と挑戦を重要な項目としてあげています。

ANAとSDGs

ANAグループでは、事業活動を通じて「社会的価値」と「経済的価値」を同時に創造し、持続可能な社会の実現と企業の価値向上を目指しています。

取り組むべき重要課題を特定する上で、まずはじめに国際社会が長期的に抱える課題を把握し、経営理念や戦略との一貫性・持続性があるかどうか、事業活動を通してその解決に貢献できるかどうかを検討します。

その後、自社の事業に与えるインパクト、環境に与えるインパクトの2軸を用いて取り組むべき課題に優先順位をつけます。

また、課題が世界情勢や環境の変化に対応しているか、ANAグループの経営戦略に合致しているかを外部有識者に精査してもらい、妥当性を確認しています。

現在、ANAグループは「環境」「地域創生」「人権」「ダイバーシティ&インクルージョン」の4つを重要課題とし、事業戦略・計画に取り込むことで、その解決に取り組んでいます。

ANAのSDGsの取り組み

「環境」

ANAグループは、2012‒2020中長期環境計画「ANA FLY ECO 2020」に基づいて環境負荷の低減に取り組み、環境分野におけるリーディングエアライングループを目指しています。2050年までに、航空機の運航で発生するCO2排出量を2005年比で50%の削減することを掲げています。

航空機の技術革新

燃費効率にすぐれたボーイング787型機や、エアバスA320型機/A321neo型機をはじめとする省燃費機材や改良型エンジンを導入しています。

オペレーション上の改善

運航方法の工夫や定期的なエンジン内部の洗浄による消費燃料の削減、機内備品の軽量化による燃費の向上を行っています。

SAF(Sustainable Aviation Fuel:持続可能な航空燃料)の導入

植物油、糖、動物性脂肪、廃棄バイオマスなど持続可能な供給源から製造されるSAFを導入しています。2020年10月にはフィンランドのSAFの製造会社NESTEと調達に関する中長期的な戦略的提携についての覚書を締結し、商業規模のSAFを調達、本邦航空会社として初めて日本発の定期便にて使用しています。

フードロスへの取り組み

機内で発生する食品廃棄を削減するため、国際線のファーストクラスとビジネスクラスで機内食の事前予約サービスを実施しています。機内で食事の要望に応えられない状況を回避すると同時に、余剰な機内食の搭載をなくし、お客様の満足度向上と食品廃棄の削減を実現しています。

「地域創生」

日本の伝統的な文化や観光資源が世界から注目される一方で、国内では地方都市の人口減少や伝統産業の衰退が懸念されています。ANAグループは、他企業、NGO・NPO、自治体などと連携し、安全・安心な観光地情報を発信することで、ニューノーマル時代における観光振興を通じた地域経済の活性化に貢献しています。

「ANAふるさと発見プログラム」

自治体・企業・働き手をつなぎ、地域への誘客につなげることを目的に「ANAふるさと発見プログラム」を展開しています。このプログラムでは、遊休資産活用、移動・宿泊・地域体験の開発に加え、宣伝・発売まで一連の流れをトータルコーディネイトし、地域課題解決による地域創生を推進しています。

新しい「旅の価値」を創出するJourney+

地域で活躍するイノベーターやリーダーを訪ねたり、実際に地域社会課題について考えたりする旅を提供するプラットフォーム「Journey+ 」を開設し、参加者と地域をつなげるきっかけづくりをしています。

ANA便を利用した国内外の旅客誘致促進

訪日旅行者向け観光情報発信サイト「Japan Travel Planner 」を立ち上げ、訪日誘客による地域経済活性化に取り組んでいます。2019年度には11言語に対応し、約800スポット以上の観光地などを紹介、月間平均のサイト訪問者数は60万人を超え、海外旅客に向けた重要なコミュニケーション基盤になっています。

「人権」

ANAグループは、国際人権章典、労働における基本的原則および権利に関する国際労働機関の宣言、国連グローバル・コンパクトの10原則、および国連のビジネスと人権に関する指導原則をもとに、2016年4月に「ANAグループ人権方針」を定めています。

SDGsの中核に人権尊重の考え方があるとし、取り組みを推進しています。

日本における外国人労働者の労働環境の把握

空港での地上ハンドリング事業やケータリング事業に携わる外国人労働者を対象に、直接インタビューや住居確認などを実施し、日本における外国人労働者の労働環境を調べています。2020年には「グローバルサプライチェーン労働者情報集約システム」を使用し、グループ会社など計92社における外国人労働者の雇用状況調査を実施しました。

機内食等に関わるサプライチェーンマネジメントの強化

2017年には日本企業として初めてブルーナンバー・イニシアティブへ参画しています。機内食の食材に関わる生産者や業者の情報登録を進め、生産過程における人権尊重や環境保全にもつながる、透明性の高い「食のサプライチェーン」の構築を目指しています。

ブルーナンバー・イニシアティブ:ブルーナンバー財団による、食に関わるサプライチェーン・プラットフォーム構築を目指す世界的な取り組み。

航空機を利用した人身取引の防止

2018年には米国で人身取引防止のプログラムを航空会社などに提供しているNPO団体Airline Ambassadors Internationalの担当者を招いたワークショップを開催しました。2018年12月からは、グループの全社員を対象としたeラーニングも実施しています。2019年には人身取引を防止するため、機内で疑わしい事例を発見した際の通報を開始し、航空機を用いた人身取引の防止に努めています。

引用:人身取引の防止に関するワークショップの様子https://www.ana.co.jp/group/csr/human_rights/approach/ )

贈収賄の防止

贈収賄のリスクが比較的高いと思われる地域を対象にセミナーを実施しています。これまで東南アジアと中国において、ANAグループ社員や現地駐在員を対象とした競争法・贈賄防止法にかかわるセミナーなどを開催しました。

「ダイバーシティ&インクルージョン」

ANAグループは、多様性を尊重する持続可能な社会の実現を目指し、グループ共通の考え方を全社的に共有するなど、「ユニバーサルなサービス」の強化に取り組んでいます。「お客様のダイバーシティ」に着目し、多様性を尊重する共生社会の実現に貢献しています。

ハード面の取り組み

搭乗手続きから、保安検査場、機内までの移動をスムーズにサポートする「樹脂製車いすmorph(モルフ)」、17の言語に対応し、空港や機内で安心してコミュニケーションが取れる「電子版コミュニケーション支援ボード」などを導入しています。

「バリアフリー・ユニバーサル推進功労者表彰」では航空運送分野初の内閣総理大臣賞を受賞しています。

ソフト面の取り組み

障がいを持つ方の心のバリアへの理解を深めることを目的として、外部講師を招いた「心のバリアフリー講座」や、障がいのある方の大事なパートナーである補助犬についての理解を深める「補助犬セミナー」など、日本社会における”心のバリアフリー”の実現を牽引できる人づくりに取り組んでいます。

LGBTフレンドリーなエアライングループへ

羽田・成田空港をはじめとしたANAラウンジの化粧室表示の変更や、ANAマイレージサービスにおける「ANAカードファミリーマイル」の「ファミリー会員」「特典利用者」における同性パートナーの登録を開始するなど、各種商品・サービスにおけるLGBT対応を進めています。

引用:ANAラウンジの多目的トイレ表示(https://www.ana.co.jp/group/csr/customer_diversity/ )

「社内啓発・浸透活動」

SDGsの理解・浸透を深め、社員一人ひとりが「自分事」としてとらえ取り組んでいくため、社内での研修やセミナー、eラーニングを実施しています。

引用:SDGsセミナーの様子(https://www.ana.co.jp/group/csr/basic_approach/ )

社内報でグループ内の取り組みを発信

各社・事業所が実践したSDGsの取り組みは、社内報などの社内媒体で紹介し、アイディア創出につなげています。また、客室乗務員などがSDGsバッジを着用し、お客様にも広くSDGsを知っていただく機会づくりに貢献しています。

まとめ

ANAグループのWebサイトを見ると、特定した重要課題それぞれに推進体制を整えており、課題に対して持続的に取り組んでいる印象を受けます。

グループ会社を巻き込んだ幅広い取り組みは、多くの小会社を傘下にもつグループの強みだと感じました。

企業の成長と社会の貢献の両軸を中心とした経営体制は、業種を超えてさまざまな企業の手本になりそうですね。

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