キッコーマン株式会社(以下、キッコーマン)は、「しょうゆ」「マンジョウ」「デルモンテ」「マンズワイン」「キッコーマン豆乳」をはじめとする商品を提供する食品メーカーです。
キッコーマンでは「おいしい記憶をつくりたい」のスローガンのもと、「消費者本位」を基本理念とし、あらゆるステークホルダーとの関係構築を大切にしています。また、地球温暖化防止への取り組みや水環境の保全、資源の再生利用など環境問題に向けた様々な取り組みを行っています。
今回は、経営・環境・社会の3つの観点からSDGsへと貢献するキッコーマン株式会社の取り組みをご紹介します。
キッコーマン株式会社/ 事業
キッコーマン株式会社の概要
キッコーマンのしょうゆづくりは、江戸時代初期に始まりました。現在の千葉県野田市で、江戸へのしょうゆ供給地としてその礎を築いたのです。野田は、関東平野に育まれた良質な大豆と小麦・江戸湾の塩など、原料の確保に最適でした。さらに、潤沢な水と気候・江戸川の水運にも恵まれた土地だったため、「しょうゆのふるさと」として大きく発展しました。
そして1917年、野田のしょうゆ醸造家一族が合同して「野田醤油株式会社」が設立しました。設立当時は200以上あったしょうゆの商標も、1940年までに「キッコーマン」に統一され、現在に至るまで六角形に「萬」の字のマークは「キッコーマン」ブランドのおいしさと品質の象徴として受け継がれています。
また、しょうゆの他にも「うちのごはん」や「キッコーマン豆乳」といったキッコーマンを代表する商品を販売しており、「おいしい記憶をつくりたい」のスローガンのもとで消費者にそのおいしさを提供し続けています。
【引用】キッコーマンしょうゆの歴史 | キッコーマン
キッコーマングループの歩み(2000-2009) | キッコーマン
設立 | 1917年 (大正6年) 12月7日 |
資本金 | 11,599百万円(2021年3月31日現在) |
主な事業 | 時株会社としてのグループ戦略立案及び各事業会社の統括管理 |
従業員数 | 7,645名(2021年3月31日現在) |
【引用】会社概要 | キッコーマン
キッコーマン株式会社の事業内容
キッコーマンの事業領域は、「”食品の製造と販売”と”食と健康に関わる商品とサービスの提供”をグローバルに展開する」です。これらの事業はデジタルマーケティング・消費者リサーチ・販促企画・国際・商品開発/食の提案・営業・品質管理・商品開発/容器・研究開発・経理・設備開発の11の分野から構成されます。今回は、その中でも消費者との関わりがより強い6つの分野に絞ってお伝えします。
データを活用して消費者理解を深めていく。デジタルマーケティング事業
キッコーマンではデジタルやSNSを活用することで、消費者への理解を深め、より良い提案や施策を考案しています。
消費者を理解するためには、幅広い情報収集とデータを読み解く力が必要になってきます。これらをもとにして、消費者起点のマーケティングを実践しているそうです。
また、SNS運用での双方向のコミュニケーションも重視しています。一方的な発信で終わってしまうのではなく、ユーザーの投稿紹介やコメントへの返信を通してキッコーマンを身近に感じてもらう取り組みを行っています。
実際に触れ合うことで生まれる気づき。消費者リサーチ事業
消費者調査では、自宅を訪問し食のシーンについて詳しく聞き取りを行います。消費者理解において、科学的視点と感覚的視点の両方のアプローチを行い、受け取った消費者情報をもとにチームメンバーとアイディアを出し合っています。
お客様の気持ちとともに。販促企画事業
「この商品気になる」というお客様の気持ちに寄り添いながら、イベント・店頭・SNSでの販売促進を行っています。業務の中では、消費者モニターの声や店頭でのお客様の感想を大切にして商品の販売に反映させています。また、店頭のポスターやレシピブックなどあらゆる販売素材を作ることも事業の一つです。外部パートナーからの提案レシピも社員が実際に作って確認しています。
海外に向けたマーケティング・販売を行う。国際事業
世界の拠点に駐在しマーケティングを行う業務です。消費者のデータ分析やサンプルの調理を通してお客様の好みを忘れない味の選定を行っています。
季節感、味の発見、おいしさ、手軽さ、お客様の笑顔。商品開発業務
「うちのごはん」「洋ご飯」などのメニューの開発や提案は、生活者視点を特に大切にしている業務です。季節の野菜を使い、調理をし、実際に調理の中で出てきた意見は、アイデアとしてパッケージの片隅や料理のヒントとしてお客様へ提供しています。
商品の特長を伝える。営業業務
商品がお客様のもとに届く大事な接点として「お店」があります。商品がどのように食卓で使われるのかといった特長を、営業業務の社員がバイヤーに具体的に伝えることで店頭に並べることができるのです。
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キッコーマン株式会社の経営理念
私たちキッコーマングループは、 1.「消費者本位」を基本理念とする 2.食文化の国際交流をすすめる 3.地球社会にとって存在意義のある企業をめざす |
キッコーマンは、企業の存続と繁栄について消費者の皆様に満足いただいて初めて実現するものだと認識しています。だからこそ、消費者を第一に考えて以下の3つの取り組みを行っています。
1.「消費者本位」を基本理念とする
食品メーカーの基本的使命は、高い品質の商品を効率的かつ安全で衛生的に作ることだと考えています。キッコーマンでは商品の品質だけではなく、容器・包装にもすべての職場で細心の注意を払い、品質管理の重要性を認識しながら万全の体制で臨んでいます。
2.食文化の国際交流をすすめる
キッコーマンはしょうゆを中心に日本の食文化を世界に発信しています。そうすることで、食文化の交流を図り、各国の食文化との融合を実現していきたいと考えています。また国内においても、食文化の継承と発展に貢献していくといいます。
3.地球社会にとって存在意義のある企業をめざす
環境保全・社会保全の取り組みも積極的に行っています。よき企業市民として行動することで、社会との共生を図っています。
キッコーマン株式会社のSDGs戦略
キッコーマンの社会的責任体系
キッコーマンは上記の経営理念をもとに社会的責任を「責任ある事業活動」「健康で豊かな食生活の実現」「地球社会との共生」の3つのテーマで体系しています。
責任のある事業活動
法令のみならず社会規範やマナーを遵守し、環境との調和を果たします。また、さまざまなステークホルダーの信頼と期待に応える責任ある事業活動を行います。
健康で豊かな食生活の実現
新しい価値を創造する研究や商品開発を進め、高い品質と安全性を追求した商品やサービスを安定的にお届けしています。さらに、世界各地の食文化の融合を通して新しい食生活の提案を行います。
地域社会との共生
「食と健康」の分野を中心に、キッコーマンらしい活動を進めていき、社会の持続的な発展に貢献しています。
長期環境ビジョン
キッコーマンは、2030年に向けた環境ビジョンである「キッコーマングループ長期環境ビジョン」を策定しています。
SDGsへの貢献として、水・エネルギー・気候変動・海や陸の豊かさに向けて長期環境ビジョンに基づいた取り組みを進めています。
また、長期環境ビジョンは気候変動・食の環境・資源の活用の3分野から構成され、持続可能な社会に向けて2030年度までに目指す目標をそれぞれ掲げています。
キッコーマン株式会社のSDGsの取り組み
キッコーマンでは経営・環境・社会の3つの観点からSDGsへの取り組みを行っています。
経営ー日本企業で初!グローバル・コンパクトへの参加ー
キッコーマンは、2001年に国連の提唱するグローバル・コンパクトに日本企業として初めて署名しました。
グローバル・コンパクト:1999年に開催された世界経済フォーラムにおいて、国連事務総長のコフィー・アナン氏が提唱し、2000年に国連本部で正式に発足した。参加する企業には、人権・労働基準・環境・腐敗防止の4分野で世界的に確立された10原則を支持し、実践することを求めている。 |
グローバル・コンパクトへの参加をもとに、お客様・社員・株主・投資家・仕入れ先といった、さまざまなステークホルダーと協同しています。そして、さまざまな文化や価値観の中で事業を行うにあたり、企業市民としての責任を果たすため、グループコンプライアンス体制の強化も行っています。
環境ー地球温暖化・水環境・再生利用・環境マネジメント・海外での取り組みー
キッコーマンでは、生産過程における地球温暖化防止への取り組みや水環境の保全、資源の再生利用など環境問題に向けたあらゆる取り組みを行っています。今回は、地球温暖化への取り組みに絞ってお伝えします。
生産部門での取り組み
キッコーマンは、製造方法や設備、エネルギー源の見直しを行うことで、温室効果ガスの削減を図っています。生産部門では、これまで蒸気を作るために使用していた重油ボイラーをCO₂排出量がより少なく環境にやさしいガスボイラーに切り替える工事を進めています。小型ガスボイラーは、重油ボイラーよりもCO₂排出量が少なく、蒸気を効率的に作れるため、年間のCO₂ 排出量を約2,000トン削減できました。
2017年2月には、キッコーマン食品野田工場が経済産業省関東経済産業局の「平成28年度エネルギー管理優良事業者等関東経済産業局長表彰(エネルギー管理優良工場等)」を受賞しました。同賞は、省エネルギーへの貢献が顕著だった関東地区の優良事業者・工場・功績者を表彰するものです。
また、2013年度には「調製豆乳」や「おいしい無調整豆乳」といった、豆乳製品を製造しているキッコーマンソイフーズ埼玉工場にて、加熱殺菌した豆乳を冷却する工程に、従来の(フラッシュ)冷却機に代えて、より冷却能力の高いターボ冷凍機2台を導入しました。その結果、年間CO₂排出量を約1,300トン削減することに成功しています。
生産部門では、場内に設置した太陽光パネルで太陽光からクリーンな電力を作り出し、それらを生産活動に利用することでCO₂排出量の削減に努めています。
物流での取り組み
キッコーマンでは、物流部門でのCO₂の排出についても削減に努めています。
2004年5月には、物流配送センターと倉庫を集約して物流体系を見直し、トラック走行の無駄の排除を行いました。さらに、原材料や大豆・小麦・ペットボトルなどの資材の調達物流と製品物流を一元化させ、空車での運行を減らしました。これにより、物流におけるCO₂排出量を大幅に削減することに成功しました。
運搬の際には、低燃費・低排出ガス型のトラックの導入や運転時のエコドライブを徹底することで、より一層のCO₂排出量の削減を目指しています。
総武物流(キッコーマン傘下の物流サービス企業)は、運輸業界や企業顧客間でも関心が高まっている「グリーン経営認証」(交通エコロジー・モビリティ財団認証)を取得しています。また、単位輸送量当たりのCO₂排出量が少ない鉄道貨物輸送も積極的に使用しており、2005年度には社団法人鉄道貨物協会から「エコレールマーク取組企業」に認定されました。
【引用】地球温暖化防止 | キッコーマン
社会ー事業・業務に根ざした食育活動ー
キッコーマンは食育を食に関わる企業の責任と捉え、2005年に発表した「食育宣言」と食育体系に基づいて食育活動を進めています。
具体的な取り組みとして、「食」体験学習があります。楽しく、おいしく、ためになる「食」をテーマとし、「銀座・しょうゆづくりと調理体験編」や「野田・えだまめ体験編」などさまざまな体験を提供しています。
まとめ
今回はキッコーマン株式会社の主な事業内容と、SDGsへの取り組みをご紹介しました。
キッコーマンは経営・環境・社会の3つの観点から取り組みを体系的に行うことでその効果を上げてきました。これらの取り組みはキッコーマンの消費者とすべてのステークホルダーを大切に想う心が伝わってくるものでした。
キッコーマンの環境への取り組みは今回ご紹介した「地球温暖化への防止」以外にも、水環境・再生利用・環境マネジメント・海外での取り組みなどがあります。
「おいしい記憶をつくる」ため、体系的にアプローチを続けるキッコーマンに今後も注目です!