【更新日:2022年4月8日 by 三浦莉奈】
ニチバン株式会社は、「セロテープ®」「救急絆創膏ケアリーヴ™」「ロイヒつぼ膏™」といったロングセラー商品を販売する企業だ。
普段、私たちが使う「セロテープ®」は70年以上前から天然素材を原料として作られてきた。ニチバン株式会社では、そんなセロテープ®をきっかけにユーザーとともに環境問題を考えたいという想いのもと、特設ウェブページ『セロテープ®でSDGsに貢献』を開設した。
今回は、セロテープ®という切り口からニチバン株式会社がどのようにSDGsと向き合い、取り組みを行っているのかについて経営企画室の山口氏に伺った。
見出し
イノベーションとグローバル。中期経営計画でSDGsに挑む
ーー自己紹介をお願いします。
山口:ニチバン株式会社 経営企画室 室長補佐の山口と申します。中期経営計画の作成や実行などに関わっています。また、年次予算の作成・機関投資家向けのIR活動なども行っています。
ーー中期経営計画に携わっていらっしゃるということですが、社会貢献やSDGsのテーマはどのように盛り込まれているのでしょうか。
山口:中期経営計画は、2019年から2023年までの計画なのですが、計画を練る段階から企業としてどのように社会貢献をしていくのかを重視してきました。
しかし、正直にいうと当時は、計画の一つの要素というレベルで考えていました。その後、1〜2年でESG投資などが盛んになり、企業のあるべき方向性の軸としてSDGsを意識するべきという考えが社内にも広がっていきました。
そこで、昨年(2020年)から今年にかけて本腰を入れて全社の活動や事業に落とし込んでいく動きになってきています。
ーー中期経営計画は具体的にどのような内容になっていますか?
山口:中期経営計画では「イノベーション創出・新製品開発」と「グローバル拡大」という2つの目標を掲げています。
今までは「セロテープ®」や「救急絆創膏ケアリーヴ™」・「ロイヒつぼ膏™」といったロングセラー商品がある一方で、新製品売上の割合はあまり高くありませんでした。ニチバンとしては変化の激しい社会を見据え、成長をし続ける必要があります。これを踏まえて、イノベーション創出・新製品開発を一つ目の重点テーマとしました。
次に、グローバルについてですが、現在、ニチバンの海外売上比率は7%です。国内市場のみを相手にしているわけではないので、本格的に海外市場での事業拡大を見据えた取組みを行っています。
これら2つの計画を推進する上での1つの切り口として、SDGsの視点から取り組みを進めたいと考えており、具体的な内容を考えています。
ヘルスケアと環境領域からSDGs4つのゴールを目指す
ーー本業というカテゴリーからSDGsに取り組んでいらっしゃるのですね。
山口:そうですね。ニチバンでは本業とSDGsの「健康と医療」「産業と技術革新」「気候変動」「海の豊かさ」の4つのゴールを関連づけて取り組みを進めています。
これは、ニチバンが関わるメディカル・ヘルスケアの領域と環境領域の両者から取り組みを進めていきたいという想いがもとになっています。
さらに、ESGという視点でもガバナンスを果たしていこうという流れになっています。SDGsの考えが生まれてから、事業の目的と世の中から求められているものが紐付けしやすくなったと個人的に思います。
ーー社内でSDGsを推進している部署はどちらになりますか?
山口:経営企画が中心になって進めています。また、環境関連部署や広報など複数の部署にまたがる取り組みも進めています。
セロテープ®=原料のほとんどが植物由来の天然素材。多くの人に知ってもらいたい
ーーセロテープ®を通してSDGsを発信していこうと考えられた理由を教えてください。
山口:「セロテープ®の主原料が天然素材でできている」という事実をより広めたいという想いがあったからです。セロテープ®は、ニチバンの中では販売構成比が大きく、かつ1948年に発売して以来、70年以上のロングセラー商品です。
発売当初から主原料を植物由来の天然素材で製造しています。そして、セロテープ®についている糊も天然ゴムを溶かしたものと樹脂を混ぜて作ったものです。主原料が天然由来であるのにも関わらず、その事実が社会にあまり浸透していないというもどかしさがありました。今あるセロテープ®への認知度とともにセロテープ®が「自然由来の素材からできている」という認知も広げていきたいという想いが今回の発信に繋がりました。
ーー今回の発信にあたって、セロテープ®の特設ページを作られたということですが、サイトを作ることになったきっかけを教えてください。
山口:ユーザー目線で「セロテープ®の主原料が天然素材である」ことをより多くの方に広めていきたいと思ったからです。また、SDGs目標17の「パートナーシップで目標を達成しよう」と絡めた観点ももとになっています。多くの企業はなるべく石油製品ではないものに切り替えたいという流れがあると思います。だからこそ、今回のサイトを通してセロテープ®を導入いただいている企業様をユーザーや企業の方に知っていただき、より多くのアクターを巻き込んでSDGsの目標達成に近づきたいと感じています。
「セロテープ®」の利用を通してSDGsの輪を広げていきたい。
ーー特設ページに賛同企業を掲載している理由も「ユーザー目線の情報発信」を大切にされているからですか?
山口:そうですね。先程もお伝えしたように、ユーザーの中にも「セロテープ®が天然由来の主原料」ということをご存知ない方もまだ沢山いらっしゃると思います。もちろん、石油素材のテープを使われている企業や消費者の方に天然由来の「セロテープ®」を使っていただくことも大切です。ですが、それ以上に今何気®なくセロテープを使ってくださっているユーザーの皆様に「お客様が使っているセロテープ、実は自然由来のものから作られているんです」というメッセージを届けたいという想いが強いです。
お客様自身に認識いただくことで、セロテープ®を使っている意味を改めて感じていただき、消費者目線でコメントなどの発信に繋げていただければ、大変嬉しく思います。このように、ユーザー視点での発信に結びつけていくためのきっかけとして賛同いただいている企業様のお名前を掲載させていただいております。
ーー御社全体としてのサステナビリティ領域、またSDGsに関して今後の展望を聞かせてください。
山口:新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、感染症の予防といった医療の分野にも徹底して貢献していきたいです。
ニチバンのメディカル事業ではワクチン接種にも携わっているのですが、注射の後に貼る止血絆創膏チューシャバン™やインジェクションパッド™もニチバンの製品です。ワクチン接種のための絆創膏という点では、他社に比べてニチバンが最初に出した製品でもあります。また、現在は既存事業からのアプローチになりますが、今後は環境医療という切り口でもSDGsの観点を踏まえて研究開発を進めていく方針です。
おわりに
普段何気なく使っているセロテープが、発売当初から天然素材を使用しているということを、今回の取材で初めて知った。きっと、日々の生活でセロテープ®を使っている方の中にもこの事実を知らないまま使っている人もいるだろう。
ニチバンでは、「セロテープ®の主な原材料が天然由来であること」をより多くの消費者に伝えるために特設ページを作り、SDGsへの取り組みを推進している。取材を通して、多くの企業や消費者が使用しているセロテープ®の環境に対するポジティブな影響を「パートナーシップ」で共有していくことがSDGs目標の達成に繋がっていくと感じた。また、今回の特設ページをはじめとする、ユーザー目線の発信でサステナブルな消費がより増えていくことが期待できる。