【更新日:2023年5月2日 by うめかわちひろ】
三菱商事は三菱UFJ銀行などと共同で、国内最大規模の脱炭素ファンドを立ち上げます。浮体式洋上風力発電や再生航空燃料(SAF)などで有望な技術を持つ欧米のスタートアップ企業に計10億ドル(約1350億円)を投資をした上で、三菱商事のネットワークを生かし、出資先と日本やアジア企業との事業連携につなげる予定です。これを機に脱炭素の機運が高まることが予想されます。
事業会社が主導する国内最大級の脱炭素ファンド
三菱商事は三菱UFJ銀行や韓国プライベートエクイティ(PE=未公開株)ファンド*のパビリオン・プライベート・エクイティと共同で設立した運用会社を通じ、近く「丸の内クライメート・テック・グロース・ファンド」をつくります。三菱商事が数億ドルを投じるほか、三菱重工業などからも出資を募り、24年4月までに10億ドルまで増やす見込みです。事業会社が主導する脱炭素ファンドでは国内最大級となります。
*プライベートエクイティファンド…複数の機関投資家や個人投資家から集めた資金を基に事業会社や金融機関の未公開株を取得し、同時にその企業の経営に深く関与して企業価値を高めた後に売却することで、キャピタルゲインを得ることを目的とした投資ファンド。
三菱商事は運用会社に9割超出資しており、投資先の選定などを主導します。対象は再生可能エネルギーや次世代燃料、蓄電池などの領域で、主に技術開発を終えた商業化前の新興企業に出資します。
世界でも脱炭素ファンドの立ち上げが相次いでいます。ソフトバンクグループやサウジアラムコ(サウジアラビア)傘下の投資ファンドは、電気を位置エネルギーに変えて貯蔵する「重力蓄電」を手掛けるエナジー・ボールト(スイス)に出資し、企業価値を2.5倍以上に高めて22年に上場させました。
2050年カーボンニュートラル実現に向けて
2050年までにCO2排出量ゼロを実現するには、22〜25年に平均年2兆ドル、26〜30年には年4兆ドルの投資が必要との試算があります。浮体式洋上風力や空気中の二酸化炭素(CO2)を直接回収する技術などに投資をするほか、出資企業との協業機会を提供して商業化を支援していくとしています。
三菱商事は30年度までに脱炭素関連で2兆円を投資する方針です。22年には米マイクロソフト共同創業者のビル・ゲイツ氏の脱炭素ファンド「ブレークスルー・エナジー・カタリスト(BEC)」に1億ドルを出資しました。BECと案件の発掘や投資などで連携することも検討しており、多額の投資で商機が広がる脱炭素で主導権を握りたい考えています。
投資額は1社当たり2000万〜1億ドルを想定し、29年4月までに20社程度に出資します。環境技術で先行する北米や欧州の企業が中心となる見通しです。商社が持つネットワークを生かして事業連携を後押しし、企業価値を高めた上で売却してキャピタルゲイン(売買差益)を狙っていきます。
SDGs CONNECTライター。大学では都市政策系のゼミに所属し、都市を経済学的な視点から捉えながら学んでいる。Mr.Children大好き。歌うのも好き。