家庭から出る食品ロスの原因3選-食品ロスを減らすためにできることも解説

#食品ロス 2023.04.11

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食品ロスを減らすために、近年、フードロス削減アプリやIot搭載の冷蔵庫など様々な工夫がされています。

では実際、家庭からどの程度食品ロスが出ているのでしょうか。また、食品ロスを減らすために私たちが簡単にできることとは何でしょうか。

この記事では、家庭から出る食品ロスの原因や、家庭でできることを分かりやすく解説します。

【この記事で分かること】

家庭での食品ロスの現状|年間247万トンの食品が廃棄されている

政府統計によると、日本では年間約522万トンの食品ロスが発生しています。この数字だけではその量を実感しにくいですが、これはすべての国民がおにぎりを毎日1つ廃棄している計算になります。

日本の522万トンの食品ロスのうち、家庭から発生したものはおよそ半分弱の247万トンです。日々の生活であまり意識することがない家庭での食品ロスですが、先ほどと同様の計算では全国民が2日に一回おにぎりを1個捨てていることになります。

ところが、この量は食品ロス量の推計開始以来最小の値となります。これだけでも、今まで莫大な量の食品が廃棄されてきたことが分かります。

家庭以外から出る食品ロス|事業系食品ロスは年間275万万トン捨てられている

食べ残し

年間522万トンの食品ロスのうち、家庭からの物を除いた残りの約275万トンは、事業系という区分に分類されます。これらは主に食品製造業や外食産業、食品小売・卸売業などから発生します。事業系の食品ロスは、製造中のミスによる廃棄、過剰在庫、流通過程での廃棄、納品期限超過による納品拒否、過剰除去、食べ残しなどから生まれます。

家庭系食品ロスと比べて、事業系食品ロス削減に対して我々消費者が取り組めることは少ないです。しかし、外食時には食べ残さないような量を注文するように心がけ、どうしても食べ残してしまった場合には持ち帰れる食品は持ち帰ることもできます。

また、すぐ消費する予定の食材を購入する際には、店頭で陳列されているものの中でも、より期限が近いものを選ぶと、食品ロス削減に貢献できます。

▶関連記事|企業の食品ロス対策18選-小売・飲食店・食品メーカーの事例も紹介 | SDGs CONNECT (sdgs-connect.com)>>

家庭から出る食品ロスの原因3選

食品_メジャー

毎年大量に発生している家庭からの食品ロスですが、当然その原因は1つではありません。続いて、その原因を見ていきましょう。

①消費・賞味期限内に食べられない

「消費・賞味期限内に食べられない」ことによる食品ロスは、家庭での調理前の食品のロス(直接廃棄)の原因の中では最も大きいものであると推定されています。

実際に食べる量以上に買いすぎてしまったり、買った後に冷蔵庫やその他の保管場所に入れたまま、食べるのを忘れてしまうことで、廃棄が発生します。

自身の冷蔵庫の中身やその他の保管してある食材の量・消費期限を把握することや、消費期限と賞味期限の違いを正しく理解することがロスの削減に繋がります。

②食べられる所も切って捨ててしまう(過剰除去)

野菜や果物の皮やヘタなどを除去する際に本来食べられる部位まで除去してしまうことも、食品ロスに含まれます。果物の皮をついつい厚く剝いてしまったり、野菜の芯を切り落とす際に可食部まで切り落としてしまった経験は多くの人にも心当たりがあると思います。

調理の際には普段より過剰除去に注意をしてみたり、可食部だと知らずに捨てていた部位(芯や茎など)の調理法を学んだりすることで、食材を適切に調理することが大切です。

③料理を作りすぎて残ってしまう(食べ残し)

「食べ残し」による食品ロスは家庭形の中では最も多く、家庭系全体の約45%を占めます。「食べ残し」の食品ロスは、料理を多く作りすぎてしまったことによるもの以外にも、料理の好き嫌いや調理後の保存の不備によるものなどが考えられます。

自身や家族の食べる量を適切に把握することや、調理後の適切な保存管理によって食べ残しを減らすことができます。

食品ロスを減らすために家庭でできること

冷蔵庫

ここまでは家庭から出る食品ロスの原因について見てきましたが、実際にその対策として、家庭では何ができるのでしょうか。

買い物時のポイント3選

まずは、家庭が食品と接する最初の段階、購入時について考えてみましょう。

①保管している食品の把握

買い物に行く前に、まずは自身が保管している食材の量や期限を適切に把握することは欠かせません。

保管している食材の量・期限を適切に把握すれば、買い物時の買いすぎや、すでにある食材を追加購入してしまうことを防ぐことができるからです。また、家に残っている期限の近い食材からレシピを考え、そのレシピに足りない材料だけを購入することなどの、様々な取り組みの準備段階となります。

食品の把握には、メモ書きやスマホでの冷蔵庫・食品庫の中身の撮影、食品管理アプリなどが役立ちます。

②使う分・食べる分だけ購入する

使う分・食べる分の食材だけを購入し、期限切れとなる食品や作りすぎを防ぐことは、基本的なことですが、食品ロスの削減に大きく役立ちます。

食品によってはまとめ買いをすると割安になるものもありますが、結局余らせて捨ててしまっては意味がありません。この「使う分・食べる分だけ購入する」ことにも、やはり自身が保管している食材の量・期限の把握が重要となってきます。

③食品の期限に注意する

食材の利用計画や保存方法を考えて、食材の期限表示を確認し、購入しましょう。

期限が近いものは割引価格で販売していることもありますが、期限内に消費せずに捨てることになると、無駄になってしまいます。割引も確かに魅力的ですが、自身の利用計画内で消費しきれる期限のものを買いましょう。

また、すぐに消費する予定の物は、あえて期限が近いものを購入することで、お店側の食品ロスを減らすことに繋がります。

調理・保存のポイント5選

レシピ_検索

①残っている食材で作れるレシピを考える

冷蔵庫や食品庫に残っている、特に期限の近い食材を利用できるような料理を作ることは、期限切れによる食材の廃棄を減らすことに繋がります。近年人気の料理レシピの情報ウェブサイトでは、使いたい食材別に様々な料理を検索できるので、活用することができれば大いに役立ちます。

さらに、期限が近い複数の食材を上手く使えるようなレシピを考えることができると、より効率的に食品ロスを軽減できます。

②調理する量を調整する

料理を作る量を適切に調整することも食品ロスの軽減に繋がります。多く作りすぎれば料理の廃棄に繋がり、また少なく作りすぎると食材を期限までに使いきれない可能性があるため、多すぎず、少なすぎない、適切な量を調理することが肝心です。

家族や友人など、自分以外にも料理を提供する場合は、提供相手の体調や健康、食事の時間の予定などを把握することで、より適切な量の調理に繋がります。

適切な量の料理を作ることは、健康の維持などにも役立つため、ぜひ役立ててみてください。

③残った料理はアレンジ

料理を作る量を調整しても、どうしても余ってしまうこともあると思います。もちろんそのままの料理で期限内に食べることができれば問題はないのですが、味に飽きて箸が進まず、廃棄してしまうこともあるでしょう。

そんな時は、余った料理をアレンジ・リメイクするなどして、美味しく楽しく食べられるようにして、期限内に食べ切りましょう。おかずにかけるソースをが変えてみたり、余ったスープにカレールーのもとを入れカレーにするなど、簡単なことからでも始められます。

④長持ちするように適切に保存

ここまでは調理のポイントを見てきましたが、食品の保存においても食品ロス削減につながるポイントがあります。

例えば、各食品に合わせて適切な方法で保存し、少しでも保存の期限を延ばすことはその第一歩です。適切な保存方法は、食品のパッケージに書いてあるものもあり、またネットでも多くの情報が見つかります。

特に、野菜をまとめて下処理して冷凍保存することは、食品ロスの軽減ロスに繋がるだけでなく、簡単に調理への利用ができるため、大変便利です。調理後に余ってしまった料理も適切に保存することで、後に食べる際により美味しく食べることができます。

⑤置き場所を工夫

冷蔵庫や食品庫内の食品の置き場所を工夫することは、買い物に行く前の食品の把握を容易にし、また購入した食品を期限切れまで食べ忘れてしまうことの防止にも役立ちます。更には、献立をスムーズに考えることができます。

特に冷蔵庫では、庫内の食材を整理整頓し、適切な配置にすることで、省エネにもつながります。

フードシェアリングの活用

フードシェアリング

あまり聞きなじみのない方も多いかもしれませんが、フードシェアリングの活用も、食品ロスの削減に役立ちます。

フードシェアリングとは、飲食店や小売店、生産者などの食品を扱う事業者が、賞味期限の近い食品や規格外の食材などをアプリやウェブサイトなどを通じて割安で販売し、それが欲しいユーザーが購入するというものです。

販売する事業者としては、本来廃棄になるはずだった商品を割安価格ででも販売することで、売上アップや社会におけるイメージ向上に繋がり、また購入するユーザー側としては、割安での食品購入など、食品ロス削減以外にも双方にとってのメリットがあります。

▶関連記事|食品ロス対策アプリ&通販サイト10選-食品ロス対策を徹底解説 | SDGs CONNECT (sdgs-connect.com)>>

食品の寄付の方法

上記のフードシェアリングにおいて食品を提供するのは主に事業者ですが、我々消費者も同様に他者へ食品を提供することはできるのでしょうか。

その1つの場がフードバンクです。フードバンクは、フード(食べ物)とバンク(銀行)の名の通り、食べ物が余ってしまった人と、食べ物に困っている人の間を仲介する役割を持ちます。

具体的には、期限が近い食品を持っている人がフードバンクへ食品を提供し、その食品を期限内に消費する人が食品を受け取ることができるシステムになります。もちろん提供することができる食品には、期限や品目、量などの制限があり、どんな食品でも提供できるという訳ではありませんが、自宅の食糧庫などで期限が近い食品を発見し、それを消費する予定が無い場合には、フードバンクへ食品を提供すれば食品ロスの削減に繋がります。

▶関連記事|《徹底解説》フードバンクとは|フードバンクのSDGsにおける位置付けとは? | SDGs CONNECT (sdgs-connect.com)>>

災害時用食品備蓄の適切な方法

災害時への備えとして各家庭で推奨されている食料の備蓄ですが、備蓄している間に思わず期限が切れてしまい、大量の食料を廃棄してしまうことがあります。ですが、そんな食糧備蓄でも少しの工夫をすれば、発生する食品ロスを削減することができます。

それが、ローリングストック法です。ローリングストック法とはは、備蓄用食品のうち、普段食べているような食品を少し多めに備蓄しておき、いずれその中から期限が近くなったものを食べ、食べた分を買い足すという備蓄方法です。

この方法では、食品ロスを減らすだけでなく、普段から少しずつ非常用食料に慣れておくことで、災害時の調理方法の勉強や、災害時に普段と違う食品を食べる事により発生するストレスの緩和などのメリットがあります。また、非常用備蓄の日頃の点検や、万が一の際に食品が全て期限切れしてしまっているというリスクを避けることができます。

期限表示に関する注意点

ここまで、食品を食べる・食べないの判断をする1つの基準となる時期について、単に「期限」と呼称してきましたが、食品の期限には「賞味期限」と「消費期限」があります。

この2つは大きく異なるものですが、皆さんは普段からその違いを意識していますか。「賞味期限」と「消費期限」の違いを正しく理解し、適切に食品を消費することは、食品ロスの軽減に繋がります。

「賞味期限」とは、袋や容器を開けないまま、指示通りの適切な保存方法を守っている場合に、食品の品質が変わらず「美味しく食べることができる期限」を意味します。この期限を過ぎても、すぐに食べられなくなってしまうわけではありません。

それに対して「消費期限」とは、袋や容器を開けないまま、指示通りの適切な保存方法を守っている場合に「安全に食べることができる期限」のことを指します。この期限が過ぎた食品を食べることは推奨されません。

つまり、「賞味期限」が過ぎていても「消費期限」が過ぎていない食品は、多少品質は落ちているかもしれませんが、安全に食べることができます。そのような食品を出来る限り廃棄せずに消費すれば、食品ロスの軽減に繋がります。

食品ロスによる5つの影響

ゴミ焼却場

ここまで家庭での食品ロスの原因とその対策を中心に見てきましたが、そもそもなぜ食品ロスを削減するべきなのでしょうか。

それは、食品が「もったいない」からというのはもちろんですが、現在大きな問題になっているいくつもの環境問題・食糧問題の緩和に繋がるからという側面もあります。ここでは、食品ロスが生み出す5つの問題を解説します。

①運搬・焼却時に大量のCO2が発生

ロスとなった食品は、廃棄後の運搬や焼却の際に多くのCO2の排出を引き起こしています。また、過剰な食品の生産も本来排出されなかったはずのCO2の排出や包装用プラスチックの使用を引き起こします。

消費されなかった食品の生産から処分までに関わる温室効果ガスの排出量は、世界の国別温室効果ガス排出量と比較すると排出量第4位の国よりも大きく、別名『世界3位の「排出国」』と揶揄されることもあるほどです。

廃棄された食品のうち、特に生ごみなどは水分が多いため、無駄に重量や体積が増えて、焼却にも多くの燃料が必要になってしまうため、より多くのCO2排出に繋がります。そのため生ごみなどは廃棄前に水を良く切ることが推奨されていますが、そもそも廃棄する量を減らすことも大事な取り組みです。

②廃棄食品の埋め立て時にメタンガスが発生

廃棄食品の処分によって発生する温室効果ガスは、CO2だけではありません。焼却されないまま埋め立てられた食品からは、発酵により大量のメタンガスが発生します。

日本での生ごみの処分は埋め立てではなく焼却処分であるため、生ごみの処分において発生する温室効果ガスはCO2がメインとなりますが、メタンガスは同じ量のCO2よりも温室効果が高く、環境への影響も大きいといえます。また、近年は生ごみから発生するメタンガスを回収し、エネルギー源として再利用しようとする手法も研究されています。

③税金の無駄遣い

廃棄された食品の運搬・処分には大量の税金が投入されるため、本来発生しなかったはずの食品ロスを生み出すことは、税金の無駄遣いに繋がります。食品ロス削減は、倫理・環境の面から推奨されるだけでなく、社会全体の効率化にも貢献します。

④発展途上国の食糧不足

日本のような先進国では食料を海外から輸入したうえで、余った食料を廃棄していますが、それと同時に、いまだに食糧不足に苦しむ発展途上国も世界に多く存在します(食の不均衡)。

日本単体で考えても、2020年の日本の食品ロス(522万トン)は、飢餓に直面する人々への国連WFPによる同年の食料支援(420万トン)のおよそ1.2倍にもなります。食品ロスを削減することは、食料価格の安定化や食料生産地での過剰な水使用の削減を通じて、これらの人々を支援することに繋がります。

⑤過剰な環境負荷

agriculture_environment_destruction

食料の生産においては、地球温暖化促進や野生生物の生息地の減少、水の使用・汚染、土壌流出など、様々な面における環境負荷が生み出されます。

当然我々が食べる食料の生産を止めることはできませんが、食品ロスを削減し、少しでも無駄のない効率的な食料生産・消費を行うことで、これらの環境負荷を軽減させることができます。

関連記事:食品ロスによる影響7選-環境・食料問題・経済への影響を解説 | SDGs CONNECT (sdgs-connect.com)

まとめ 

food_happy

我々の生活とは切っても切り離せない食料消費。今回はその負の面を見てきました。

普段意識していてもどうしても発生してしまう食品ロスですが、それを少しずつでも減らすことで地球の未来と明日の美味しい・楽しい食事に繋がります。

今回は家庭でも出来る食品ロス削減方法を中心に解説してきましたが、その他の場面でも沢山の削減方法があります。最初は慣れないこともあるかもしれませんが、できるものから1つずつ始めてみてはいかがでしょうか。

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