CSRとは?企業の活動例から効果的なCSR活動の進め方や注意点

#持続可能#環境#経営 2021.08.05

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【更新日:2023年8月16日 by 田所莉沙

CSR(Corporate Social Responsibility)とは、企業が社会貢献のために実施している取り組みです。近年問題となっている環境問題や社会問題を解決するために、企業も積極的に実施しています。

似たような言葉としてSDGsという言葉もあります。CSRとSDGsでは、一体なにが違うのでしょうか。また企業がCSR活動をするための進め方とは、どんな手順があるでしょうか。

この記事では、CSRに関する概要や、企業がCSR活動を行うメリットについて解説していきます。また実際に日本の企業が取り組んでいるCSR活動についても、紹介していきます。

【この記事でわかること】

 

CSR(Corporate Social Responsibility)とは

まずはCSRに関する定義や、近年注目されている理由について紹介します。

CSRの定義と目的-SDGsとの違いも紹介

CSR(Corporate Social Responsibility)」とは、企業が事業を展開する中で、利益だけを追求するのではなく、環境や社会を考慮したり、社会貢献をしたりと、社会をよくするために行動することです。CSRは「企業の社会的責任」とも言われます。

CSRと似た用語としてSDGsがあります。「SDGs(Sustainable Development Goals)」は、地球温暖化や気候変動など、世界各国で直面している問題を解決するために取り組むものです。

CSRは企業が社会的責任として取り組む活動ですが、SDGsは、基本的に各国の政府や自治体が取り組みを推進します。しかし実際に取り組みには、わたしたちにもできることもたくさんあります。

関連記事:CSRとSDGsの違いと関係性を徹底解説-CSRとSDGsの企業事例3選

関連記事:CSRレポートとは?-その役割から書き方までを徹底解説

CSRの重要性と広がった背景

近年、CSRが重要なものとして考えられ始めたのは、企業の成長に伴う不祥事などが挙げられます。たとえば企業が保有する個人情報が流出してしまったり、不正会計が発覚したりと、さまざまな問題が発生しています。社会に及ぼす影響力が大きい企業であればあるほど、不祥事などが発生した際に与える影響は大きくなります。

また企業の不祥事以外にも、世界各国で直面している地球温暖化や気候変動などの環境問題従業員の劣悪な労働環境など、多くの問題を抱えています。CSRは、これらの問題を解決するための手段として、世界中で多くの取り組みが行われています。

CSRの具体的な活動例

続いてCSRの取り組み内容について、それぞれ説明していきます。

環境保護に関する活動

日本の企業の大部分が、CSRの中でも環境に関連する取り組みを行っています。環境保護に関する活動として挙げられるのが、環境汚染の防止植物の保護植林活動などです。

近年では地球温暖化や気候変動など、環境に関する問題が多く発生しています。CSR活動を通じて環境保護に取り組むことで、現在の問題の改善や解決につながります。

環境保護に関する取り組み
・環境汚染の帽子
・植物の保護
・植林活動
・プラスチックごみの削減
・二酸化炭素の排出量削減 など

社会貢献・地域貢献に関する活動

社会貢献活動や地域貢献活動に該当する取り組みには、文化支援人権の保護女性の地位向上などがあります。これらの取り組みは、CSRとして取り組みを実施している企業が多いものです。

一方で貧困問題や児童貧困、疾病などに対する問題は、取り組む企業が少ない傾向にあります。

社会貢献・地域社会に貢献する活動
・文化支援
・人権の保護
・労働環境の改善
・雇用形態の多様化
・女性の社会進出の推進、女性地位の向上
・地域活性化のための資金援助 など

企業の経済活動と倫理、法令遵守に関する活動

法令遵守」とは、会社の規則や法令、社会で守られているルールを守ることです。社会で守られているルールには、法律で定められているものだけではなく、常識として捉えられる事柄についても守る必要があります。

また法令遵守はコンプライアンスと言われる場合があり、法令遵守に関するCSR活動としては、社内での研修や、教育が該当します。とくにコンプライアンス敎育には、従業員に足して行うものや管理職を担う人々に対して行うもの、営業職に勤める人々に対して行うものなどがあります。

企業の経済活動と倫理、法令遵守に関する活動
・社内での研修や敎育
・組織体制の構築や強化
・コーポレートガバナンスの浸透 など

 

効果的なCSR活動の進め方と注意点

つぎにCSR活動の進め方や注意点について説明します。

関連記事:CSR報告書とは|CSR報告書を作成するメリットや注意点まで網羅

1.トップマネジメントの意識と組織体制の整備

まずCSRに取り組む際に必要なことが、マネジメントの人々の意識を高めたり、組織体制を整えたりすることです。「トップマネジメント」とは、企業の中で主に経営を行う人が、企業の経営方針や戦略を決定し、企業全体で実施しつつ管理していくことを言います。

トップマネジメント層のCSRに対する意識が低くなってしまうと、従業員のモチベーションも上がらず、企業として成長しにくくなってしまいます。そのため経営の中心に位置する人が、問題意識を高め、CSRの方向性を考えていくことが大切です。

2.ステークホルダーとのコミュニケーションを大切にする

企業が展開する事業は自社だけで完結しません。企業とのつながりをもつ、ステークホルダーとのコミュニケーションも重要です。

自社内のステークホルダーには、株主従業員経営者などが挙げられます。一方自社外では、企業との取引先顧客行政機関などさまざまな人々との関わりがあります。各ステークホルダーとのコミュニケーションはそれぞれ異なるため、各ステークホルダーが必要とする情報を定期的に発信するなど、透明性の高い経営を行うことが重要です。

3.CSRの成果を評価し、フィードバックを組み込む

CSR活動はただ取り組みを考え、実行するだけでは意味がありません。行ったCSR活動に対して定期的に成果を評価し、フィードバックすることも必要です。実際に行った政策を評価する方法は、いくつか存在します。

たとえば「ECS2000(Ethics Compliance Standard 2000)」という評価方法は、1995年に麗澤大学大学の教授が中心となって発表された、倫理法令遵守マネジメントシステムです。この評価方法では、企業のインテグリティの向上や、企業が掲げた目標を達成できるように目指す姿勢を評価します。

そのほかにも評価方法があるため、それぞれの企業が選択して、自社の活動に対し評価していく必要があります。

4.CSR活動が企業のビジョン、ミッションと合致しているかを確認する

CSR活動のフィードバックを通じて、自社が取り組む活動と、掲げるビジョン・ミッションと合っているかをきちんと確認することも重要なことです。

積極的にCSR活動に取り組めていても、企業の方針と異なっていると、CSR活動を行っている意味がなくなってしまいます。企業のビジョンやミッションに見合った活動を実施しましょう。

5.CSR活動の透明性を確保し、間接的な影響を考慮する

CSR活動は、社会がよりよくなるよう貢献する活動です。そのため活動自体に透明性がなければ、活動を行っても企業にとってのメリットがありません。不正などの行為が発生しないよう、注意することが重要となります。

不正行為などは、SNSでのバッシングを受けたり、企業のイメージ低下したりと、企業にとってもデメリットとなってしまいます。

企業がCSR活動を行うメリット3選

続いて企業がCSR活動を行うメリットについて、解説していきます。

関連記事:CSR活動とは?|企業が取り組むメリットから企業事例を解説

企業イメージとブランド価値の向上

まず挙げられるメリットとして、企業のイメージが向上するというメリットがあります。企業が消費者や、取引先の企業など、多くの人から評価されることで、企業の価値も向上していきます。

また企業の価値が向上することで、投資家の人々から支援されやすくなり優秀な人材も集まりやすくなります

従業員のモチベーション向上と離職率の低減

CSRに取り組むことで、企業での働き方も改善されていきます。これにより、企業に勤める従業員のモチベーションの向上や、離職率の低減も期待できます。

とくに労働環境を改善することは、従業員の満足度が向上し、仕事へのモチベーションも向上します。また生産性も向上するため、企業にとってもメリットとなります。

リスク管理の強化

CSRの活動の中には、企業が直面する可能性のあるリスクに備えて、組織体制を整えることも含まれています。組織体制を整えることで、万が一のリスクに備えることができます。万が一のリスクには、SNSなどによるバッシング不正会計などが例として挙げられます。

近年、グローバル化やテクノロジーの発展など社会の変化が著しい「VUCA(ブーカ)時代」といわれています。「VUCA時代」とは、Vokatility・Uncertainty・Complxity・Ambiguityの頭文字を合わせた言葉です。

時代の変化が急速である社会では、企業が予期できないリスクに直面する場合もゼロではありません。これらの危機に対してCSR活動は、リスクの対策ができる一つの手段です。

企業のCSR活動事例5選

つぎに実際に企業が取り組んでいるCSR活動について、紹介していきます。

関連記事:《徹底解説》CSR企業ランキング上位の企業の取り組み|上位5つの企業を徹底解説

トヨタ自動車株式会社-仕入先サステナビリティガイドラインの公開

トヨタ自動車株式会社は、愛知県に本社を置く自動車メーカーです。現在は日本で最大級の規模を誇る企業となっており、世界の各地域でも生産・販売がされています。

取り組んでいるCSR活動が、仕入先サステナビリティガイドラインの作成と公開です。もともと2009年からCSRの取組として、仕入先CSRガイドラインを作成していました。2021年からは、深刻化している環境問題・人権問題への解決に向けて、ガイドラインを見直しています。

仕入先サステナビリティガイドラインでは、環境人権コンプライアンスに関する取り組みをそれぞれ具体的にまとめています。とくに自動車の生産において重要な資源である天然ゴムの調達には、国際的な枠組みであるGPSNRへ参加し、持続可能な資源の調達に取り組んでいます。

GPSNR(Global Platform for Sustainable Nature Rubber)
…WBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)で発足した国際的なプラットフォームのこと。自動車メーカーやゴム生産農家などが集っている。

株式会社ファーストリテイリング-ユース難民アートコンテスト

株式会社ファーストリテイリングは、ユニクロやGU(ジーユー)、セオリーなどのブランドを運営し、世界中で展開しているアパレル企業です。ファーストリテイリングが抱えるさまざまなブランドの中でも、ユニクロはグループの中核を担うブランドとなっています。

世界で展開されているユニクロが取り組んでいるCSR活動の一つが、ユース難民アートコンテストです。このコンテストは、2020年から国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によって立ち上げられ、共同で開催しています。また次世代を担う子どもや若者たちの才能を、アート作品を通じて、難民の人々への支援活動につなげています。

立ち上げから3回目の実施となる2023年度は、「HOPE AWAY FROM HOME/#難民とともに描く希望」というテーマとなりました。アート作品の募集期間は、9月末となっており、その後アートワークショップが開催されます。

富士フイルム株式会社-DocuWorks Cloudの提供

富士フイルム株式会社は、写真や映画のフィルムだけではなく、印画紙や現像装置など、写真に関連する事業を広く展開している企業です。また医薬品や医療機器、化粧品の製品も手掛けています。

富士フィルムにおいても、CSR活動に積極的に取り組んでいます。中でも労働者の働きやすい環境づくりの一環として、新しいクラウドサービスである「DocuWorks Cloud」の提供をはじめました。「DocuWorks Cloud」では、オフィス以外の場所でもデータを他の従業員と共有ができ、共同で作業をすることができます

このクラウドサービスを導入することで、いつでも仕事に必要な資料が得られ、オフィス以外でのやりとりがスムーズになります。また育児などでなかなか出社できない人々にとっても、働きやすい環境が整います。

株式会社ファンケル-メイク・身だしなみ無料セミナー

株式会社ファンケルは、化粧品や健康食品の製造や販売を行うメーカーです。化粧品は無添加製品を多く製造しており、さまざまな年代に向けた商品を取り扱っています。

ファンケルが取り組むCSR活動は、メイクや身だしなみの無料セミナーです。このセミナーは、1988年から社会貢献活動として、福祉施設や特別支援学校で行われています。

2020年度9月に行われたセミナーでは、オンラインにて正しい洗顔の方法、日焼け止めクリームの塗り方や身だしなみの整え方などを、紹介しました。これらのセミナーを通じて、世の中の不安や不便などの「不の解消」に取り組んでいます

サントリーホールディングス-CSR推進体制

サントリーホールディングスは、酒類や清涼飲料水などの商品を製造・販売するグローバル飲料メーカーです。自社の商品を通じて人々の生活を潤い豊かにするだけではなく、自然の豊かさを保全することを目指しています。

サントリーホールディングスでは、事業展開のために、さまざまなステークホルダーと関わり合っています。そのため持続可能な社会の実現に向けて、各ステークホルダーとのコミュニケーションを大切にしています

たとえば取引先の企業とのつながりは、CSR調達説明会を設けたりアンケートを実施したりして、構築しています。また消費者とは、問合せセンターによる意見の受付や、Webサイトでの情報開示を通じて信頼関係を築いています。

関連記事:CSR調達とは? 調達実現に向けた取り組みを徹底解説

まとめ

CSR(Corporate Social Responsibility)」とは、利益の追求だけではなく、企業が社会をよりよくするために、社会貢献活動を行うことです。SDGsとは異なり、企業が中心となって取り組むものになっています。

CSR活動は、実施することで企業の価値が向上したり従業員のモチベーションが上がったりと、さまざまなメリットがあります。また万が一のリスクにも備えることができます。

実際にCSR活動を行う際は、ステークホルダーとのコミュニケーションを大切にし、企業のビジョンなどに合った政策を行うようにしましょう。

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